★Book Rview 死にひかれゆく君へ、伝えたい

JAYE 公山
ゴスペルシンガー、NPO法人ジェイズ・マス・クワイア代表理事

なんとも言えない「切なさ」を感じるタイトル。しかし読み進んでいくほどに、その中身には「愛」がれていることがわかってくる……。
発表された二〇〇九年度の自殺者統計によると、日本人の自殺者は十二年連続で三万人を超えたという。十万人あたりの自殺者数は二五・五人。特に働き盛りの男性の自殺率は驚くほど高い。しかもこの国では、その年代の死因の一位は「自殺」である。東欧の旧共産主義国を除いて、世界的に見てもまれに見る特殊な状況といわざるを得ない。自殺はすでに「遠い誰かの話」ではなくなった。身近な人にいつでも起こりうる「現実的な悲しい出来事」なのである。
独裁者国家ではない、貧しさに飢えることもない、教育も医療も、世界的に見ても恵まれている、と思われているこの国で……。
何がそうさせるのか?
なぜそうなるのか?
時にハッとさせられ、時に頷かされるのだが、その文章は徐々に熱を帯び、次第にそれらの疑問に答えと対処法を見出そうとするだけではないことに気付かされる。
そこには「人はなぜ生まれてきたのか?」
「その生きる意味は?」
また「生きがいとは何か?」
など、碓井博士自身が積み上げて来た経験や、膨大な知識を基に、人間の本質的な命の根源にスポットが当てられている。この本はまさしく、筆者による「真実」と「愛」の探求なのでは……。
時にバイブルの一節に照らし合わせて語られる、その一文一文にこめられたメッセージからは、「あなたを愛しています」、そうやさしく語りかけるJesusの声が聞こえるような気がした。

『あなたが死んだら私は悲しい
心理学者からのいのちのメッセージ』
碓井真史著
四六判 1,260円(税込) 
フォレストブックス