ずっこけ宣教道 第4回 中国大連篇

松本望美
北朝鮮宣教会所属

 語学学校の近所を散歩していると、「献血中心(センター)」の看板が目に入った。

 私は献血が大好き。迷わず献血中心に飛び込んだ。

 なんとも薄暗い入口に受付の机があって、一人の看護師らしいおばさんが座っていた。

 「献血したいんですけど?」と言うと、「じゃ、この紙に記入して」と愛想のない態度。

 私が名前を書くと、名前が漢字四文字だったせいか、おばさん看護師は「日本人か?」と聞いてきた。「はい」と答えれば「歓迎歓迎!」と私の手を握り、大きな声で「日本人の同志が献血に来たわよ!」と叫んだ。すると、どこからともなくドタドタと、おばさん看護師が何人も集まり、「歓迎歓迎! 日本人同志!」と一人一人が握手を求めてきた。

 申込書を再び記入し始めると、おばさんがたが代わるがわる質問を浴びせてきた。

 「日本のどこから来たの?」「結婚はしているの?」「日本での一か月の給料は、人民元でいくら?」などなど。

 「身分証明書は、パスポートでいいですか?」と言うと、「ちょっと見せて!」と奪い取り、「この写真はコダックか? フジフィルムか?」とか、「この写真のパーマは、日本ではいくらか?」と尋ねるのだった……。

 申込書裏には、健康状態への質問が並んでいた。「妊娠しているか?」「心臓病はあるか?」「最近手術はしたか?」など。それを読み始めると、「これは私が答えておいてあげる!」と受付にいたおばさんが申込書を奪い取った……。

 いよいよ献血ルームに通された。明るくてとても清潔。針が刺されて、私の血が管を通って行くところを見届けた後にふと顔を上げると、さっき受付に集まってきたおばさんがた全員が私を取り囲んでいた。

 「じゃあ、てのひらを開いたり閉じたりして」と言われ、グーパーしていたが、周りのおばさんがたからは、「日本と中国はどっちが好きか?」「新幹線に乗ったことはあるか?」と立て続けの質問攻め。挙げ句の果てには「山口百恵は今どうしているのか?」と聞かれ「知りません」と答えると、「東京に住んでいるのに知らないのか?」と驚かれた……。

 その間ずっと、私の左手はすごい速さでグーパーしていたせいか、それが強力なポンプ作用となり「あ! もうパンパンになってる!」と看護師が声を上げた……。

 献血が終わると、出口のところでおばさんがたが花道を作ってくれ、「謝謝! 日本の同志よ!」とまた一人ずつと握手しながら建物を出た。

 宣教師として中国を知るにはいい経験になったが、「献血したんですか! 望美さん、人民解放軍ですか?!」と驚かれたのだった。