ずっこけ宣教道 第6回 タイ篇

松本望美
北朝鮮宣教会所属

 タイとミャンマー、ラオスの国境が接している「ゴールデントライアングル」という場所に出かけたことがある。

 ここは麻薬地帯とも呼ばれている場所でもある。

 タイに多くの脱北者が流れており、中国国境を越え、メコン川を渡って入国してくるのだという。


 そんな脱北者の状況を調査するために、私たちはメコン川を船で渡ったり、彼らが潜んでいるかもしれないジャングルをジープで走った。

 途中、突然のスコールでタイヤが泥道にはまり、「はい、降りて押してください!」という場面もあったし、山道を走る中で、水牛にまたがった少年たちと出会ったりした。

 「彼らにチョコレートをあげたい」というアメリカ人宣教師が車を降り、片手にお菓子を持って彼らに近づいたのだが、生涯で初めて「コテコテ西洋人」に遭遇した彼らは、水牛を木でできた細いムチでたたき、大慌てで逃げてしまったのだった。


 しばらく走ると、集落が見つかった。
 村の人たちは民族衣装を着て、家は木で作られた「高床式住居」。
 その家の下で家畜が飼われている。
 もちろん電気も通ってなければ、水道も見当たらない。
 村の人たちはとても人懐っこく私たちのところにやってきた。
 私たちの道案内の人があいさつする。
 「古着があったはずだ」と韓国人のボスが言い、韓国から持ってきた古着の束を一つ渡した。


 道案内の人によると、彼らの村の全員がクリスチャンだという。

 ある男性がボロボロのギターを持ってきた。

 そして、子どもたちを一列に並ばせた。子どもたちにいろいろと話している。そして、子どもたちが振り付きで歌を歌い始めた。

 曲の中には何度も「イエス」という単語が聞こえてきた。

 満面の笑みの子どもたちの踊りに合わせ、村の大人たちは手拍子をしていた。

 小さな集落から、見渡す限り広がっている山々に歌声が響いていった。


 「こんなへき地にまで福音が届けられている。届けた人がいる。」
 当然だけど、新鮮な感動。

 「私に届けてくれた人がいて、今度は私が伝えて、伝えた人が今度は伝えて……。」
 福音のリレーは、主が再び来られる日まで続いていくし、今だって、地の果てまで届けられている。

 思いがけない新鮮な感動をいただいて、私たちは気持を新たに山を下りて行ったのだった。