ドニー・マクラーキン来日記念 謙遜と情熱を身につけた人 若者宣教の思いをともに
私が彼を招いたわけ

波多 康
ゴスペル企画ミニストリー代表/同盟教団衣笠中央キリスト教会協力牧師

 私にとってドニー師は、すばらしいゴスペルシンガーである以上に、福音宣教への熱い情熱を持ち、焦点がイエス様からずれないクリスチャンであるという印象があります。驚くべきことは、これほど有名にもかかわらず「普通の人」であることです。

 日本の方々に、彼の信仰と謙遜な人格に直接触れてほしい、またドニー師に日本宣教に協力してもらいたいと願いはじめ、今年五月のゴスペルワークショップとコンサートの企画が実現したのです。

ドニー師との出会い

 私は二〇〇一年四月、アメリカ、ナッシュビルで開かれたGMA(Gospel Music Association)で初めてドニー師と会いました。GMAは毎年四月にナッシュビルで開催されるゴスペルのフェスティバル兼セミナーです。

 最終日にはゴスペル界の権威ある賞のひとつ、ドーヴ賞の授賞式が華やかに行われます。そこにはゴスペルビジネスにかかわる人が全米から集まり、一度にさまざまなアーティストや関係者に会うことができます。

 私は若者伝道のためのあらゆる可能性を探りたいと思い、それまでに二回参加していましたが、そこで少しずつ見えてきたことがありました。それはゴスペルアーティストがすべて敬虔なクリスチャンというわけではないという現実です。

 そこで三回目の参加にあたり「あなたの御心のままに私が会うべき人に会わせてください」と祈っていました。渡米の直前、ひょんなことからあるゴスペルアーティストのライブビデオを見る機会があり、初めて見るその楽曲のすばらしさや歌詞の内容、雰囲気に感動しました。それがドニー・マクラーキンでした。「ぜひ彼と話したいと思います。御心なら道を開いてください」と祈りつつ、渡米しました。

 ある会場でのことです。隣に座った白人が話しかけてきました。ナッシュビルでさまざまなアーティストのマネージャーをしているとのこと。この期間は有名無名を問わず、こうした職業の人は特別めずらしくありません。特に彼はナッシュビル在住の白人だったので、おそらく私の会いたいアーティストたちとは無関係だろうと思い、あまり気乗りもせず話をしていました。しかし、彼は日本から宣教の思いをもってアメリカまで来たという東洋人に興味をもったらしく、お茶に誘ってくれたのです。

 その席で話のついでに何気なくだれのマネージャーかを聞いてびっくり。なんとドニー・マクラーキンのマネージャーだったのです。そのほかワイナンズやブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ、リチャード・スモールウッドなど、そうそうたる名前が次々に出てきました。思わず「はよ、言わんかい!」と心の中で叫びつつ、主の不思議な介入を思いました。

宣教への思い

 彼(ロジャー・ホームズ氏)に日本の現状を話し、宣教の必要などを伝えると「感動した。ぜひドニーに紹介したい。会ってもらっても良いか」と言うのです。突然の話に驚きつつ「はい」と答えると、すぐその場でドニー師に電話をかけました。まったく思いがけない展開に頭がついていきませんでした。

 そしてドニー師が宿泊するホテルに向かったのです。背の高い蕫ドニー・マクラーキン﨟がゆっくりとこちらに歩いてきました。

 彼は「もし僕が日本に行った場合、どうやって福音を伝えるつもりだ?」と聞いてきました。通訳をつけること、歌詩の意味を字幕で流したり、プログラムに入れようと思っていると伝えると「グレイト!」と彼は喜び、宣教に対する熱い真摯な思いを静かに話してくれました。その姿は大成功を手にしつつあるアーティストの姿ではなく、高慢さや浮いた態度とはほど遠い、謙遜な、イエス様を愛する伝道者の姿でした。その時、私はぜひ彼に日本の宣教を助けて欲しいと思ったのでした。

 ところが、その年に彼はドーヴ賞を受賞、渡米直前に私が見たビデオ&CDは大ヒットを記録し、文字どおりトップアーティストになりました。その後もロジャー氏と連絡を取り続けましたが、ギャラはますます高額となり、招くことは年々困難となりました。

再度、願いを込めて

 そのころ、デトロイトの教会で副牧師をしつつアーティストとして活動していたドニーが、ニューヨークで主任牧師になったとの情報が流れてきました。その新たな展開に期待し、あらためて彼に日本の宣教のために協力してくれることを直接伝えようと祈り、ニューヨークに行きました。

 久しぶりに再会してまず驚いたことは、前回会った時からはるかに有名になっているにもかかわらず、その謙遜な態度や雰囲気がまったく変わっていないことでした。二人で一緒に祈り、あらためて思いを伝えました。

 じっと話を聞いていた彼は、その場で従来のギャラを度外視して、ボランティアに限りなく近い条件で、日本の宣教のために来日することを決意してくれたのでした。

 アメリカにいる友人のアーティストたちにこのことを話すと、異口同音に「彼は本物のクリスチャンだ。あり得ない。信じられなくすごいことだ」と感動します。その彼らの反応を聞いて、あらためて本当に主が働かれたことなのだなと思わされました。主の御名をほめたたえるばかりです。