ブック・レビュー 『おはなしのへや』
お母さんのための絵本の旅

『おはなしのへや』
望月鈴子
日本キリスト教改革派 田無教会会員

絵本をとおして子育て、自分育てを考える

 著者、澤谷由美子さんは、十四年間にわたって、「母と子のためのおはなしのへや」という活動を四つの教会でしてこられました。その活動から誕生したのが、この本です。

 《お母さんのための絵本の旅》と副題がついています。この本は、神様によって《いのちの息》を吹き込まれた著者が、絵本を通して自分や神様と向き合って、ひとりの人格として生きていくとは何なのかを考えぬいた結果できたものでです。また、著者自身が何によって生きる力を得たかを証しています。

 牧師夫人として教会と隣人に仕え、妻として母として労し歩む日々の中で、絵本から様々なメッセージを受け止めてお母さんたちの子育てを応援し、心と体と魂を健やかに輝かせ、育て励ますことばを紡ぎ続けました。それらが、「出会いと結婚」「出産」「子どもとことば」などの女性のライフステージに合わせた七つの章に分けてまとめられました。一節ごとで絵本を紹介し、そこから読みとることのできるメッセージから、女性の自立の過程を浮き彫りにしていきます。

 著者は、絵本と子どもが大好きで、一緒に絵本を読むことが至福の時だと話していました。おまけに国語教育の専門家で、人が美しい心で成長していくために、どんなに《言葉》が大切かということも心得ています。

 私は、著者と長年の親しい友人ですから、著者は、鋭い、しかし豊かな広がりのある感性、深い洞察力を持っており、豊富な経験、そして、信仰に根ざした深い愛を持っている祈りの人ということを知っています。ですから、この本で紹介されている優れた絵本たちと同様に、著者の語る言葉は心に響きます。

 クリスチャンに限らず、独身の方、子育て中の方、すでに子育てを終えてこれからの人生をどう歩むかを考えておられる方、あるいは教育者、どなたが読まれても、多くの有益な示唆を与えてくれる一冊です。