ブック・レビュー 『おやすみのまえに』

『おやすみのまえに』
片岡栄子
国分寺バプテスト教会会員

ボリガーから合格点をいただいた、なめらかで、美しい語りの絵本

 一日の締めくくりを、どう過ごすかということは、大人と同様、子どもたちにも大切なことです。父親や母親や家族の声で語られるベッドタイム・ストーリーは、子どもの心の栄養です。

 本書の「きみが わけてあげられるもの」「こわいものから まもってくれるもの」「あたらしい いちにち」など、心に種をまいてくれることでしょう。

 ボリガーは、五十年の文筆活動の中で、すでに百五十作品を生みだし、中でも絵本と児童キリスト教書には、ロングセラーが数多くあります。邦訳は、十五冊出ています。

 彼は、障害児教育に携わった後、詩を発表し、評価されて作家活動に入りました。それゆえ、無駄な言葉を省いて、できるだけ短い言葉で的確に表現しようとする作者の姿勢には、子どもの理解する心、考える力、感じる能力への深い信頼があることを感じさせられます。

 それは、『三びきのこぐま ベン・ヤン・ヨーン』シリーズや『こどもたちの はし』、また『クリスマスってなあに?』の中にも、共通して感じられるものです。

 ボリガー自身が子どもの本を書くうえで、大切にしていると語っているのは、「子どもは、だれかから教えられて、わかるのではない。だから、子どもを邪魔する無駄な言葉を使いたくない」ということです。

 子どもは、自分自身で感じて考えて理解できるのに、親や大人が言葉を浴びせて、せっかくの機会を奪ったり、傷つけたりしていることが多いのだと思いました。

 訳者のたかおまゆみさんは、スイスの保育園で、ボリガーの作品に出会ったそうです。

 挨拶に訪れた訳者に対して、ここをどう訳したか日本語で読んでみてほしいと頼み、日本語は、わからないけれど、リズムなら感じられるからと、ゆっくり音読した一頁を、静かに目を閉じて聴いてくださって、ボリガーさんから合格点をいただいた、なめらかで、美しい語りの絵本です。