ブック・レビュー 『なぜ、「君が代」を弾かなければならないのですか』

『なぜ、「君が代」を弾かなければならないのですか』
中山 弘正
ヤスクニの集いメンバー 明治学院大学教授

国旗国歌法が教員、生徒に襲いかかる。戦いは続く

 国旗国歌法が1999年8月9日に強行成立して以後、公教育の現場でどれほどの人権蹂躙が行われているのか。本書はその現場で苦悩する音楽の教員の証しを中心に、蹂躙された側からの悲痛な生の声などをまとめたものである。テープで流されるのはもう止めがたい、しかしなぜ「弾かなければならない」のか。

 まず3人の小学校音楽専科教諭(匿名)の座談会、続いて5人の体験談や意見開陳がなされ、最後に資料が7点収録されている。

 A

「音楽をする者、人間として自分の大事にしているものを否定される強制が、公務員だからという理由で、そして校長先生が何でも決められる体制ができたことで、さらに強硬に行われています。」(10頁)

 B

「私はキリスト者ですので、かつて天皇賛美に使われた歌を演奏することはできないということです。」(13頁)

 C

「(校長は)私が絶対だ、もう独裁者みたいな感じです。」(22頁)

 佐藤美和子さんは「毎年確実に私の前に姿を現し、このように私を苦しめる『君が代』のない世界」(それが死後の世界だとしても)を考えさえするほどの苦悩をしつつも、全国から寄せられたハガキ、FAXに勇気づけられ「人の生き方について命令や決定を出さないでください」(55頁)などと校長に書簡を出されたという。校長の考えは硬かったが、校門に佐藤さん支持のプラカードを掲げてじっと立ち励ました牧師の姿があったという。

 心が熱くなる。これほどまでの苦悩が、大勢の教員に、またおそるべき数の生徒に今も襲いかかっている。事態に流されると現場はいっそう荒廃していく。しかし戦いは続いているのだ。そのことを本書は確信させてくれる。闘っている者には前方を歩まれる主が見えている。