ブック・レビュー 『ほんとうにたいせつなもの』(たいせつなきみ2)

ほんとうにたいせつなもの(たいせつなきみ2)
日高 恵
日本福音キリスト教会連合 立川駅前キリスト教会 会員

絵本から知らされる創造主の奥義

評者:日高 恵演劇集団「ジェイズ(J's)倶楽部」メンバー日本福音キリスト教会連合 立川駅前キリスト教会 会員「……おまえはこのごろ、しあわせじゃなかっただろう?」(29頁)

 創造主エリに会うまで「このごろ」どころか「ずうーっと」しあわせじゃなかったパンチネロ。やっとエリと出会って本物のしあわせを手にしたのに、また自分からそれを見失っていく。 大ヒットした『たいせつなきみ』の続編である本書は、さらに人間社会の哀しい現実をウイミック村に描き出した。

 シール貼りがなくなったと思ったら、今度は物欲、所有欲の競争がはじまった。みんながはことボールを集めはじめる。はじめは無邪気なことだったのに、いつのまにか競争に発展し、村中のほとんどがこの競争に夢中になっていく。村長さんのおくさんなぞは、ブランド品のはこまで手に入れたらしい。パンチネロは、はことボールを得るために全生活をつぎ込んで、しまいには寝るところさえ失ってしまう。――全く人間社会の縮図そのものだ。

 人のしあわせってなんだろう? 最近ではあまり話題にもされなくなってしまったが、しかし誰もが相変わらず、その答えを欲しがっているのではないだろうか。そして、しあわせを渇望しながら、いつかは消えてなくなる「しあわせの代用品」で自分を埋めることに躍起になっている。

 しかし、パンチネロは幸いだった。競争の道をまさしく登っているつもりで知らずに道からそれてしまったことで、もう一度エリと向かい合うことになったからだ。

 再びパンチネロを迎えたエリは、実にしなやかで、不思議に語りかける。どれだけ目に映るものに縛られているか、どれほど莫大なものを失って生きているかを知らせる。そしてさらに「あのはことボールはどうしたらいい?」と固執していたものの無用さに気づいた者に、「本当に必要な人にあげるといい」とすべてをあるべきところの美しい姿に変える。そこで被造物は本当の満たしと安らぎを取り戻す。

 読み終えた私は、少しだけ微笑んでパンチネロに話しかける。「あなたが懸命に登っていった競争の道を『知らずにそれてしまったこと』も、きっとエリの導きだったんだね……」って。