ブック・レビュー 『わが家のリビング 介護天国』

『わが家のリビング 介護天国』
富浦 好之
日本福音教会 国分福音教会 牧師

飾り気のない本音を「おセイさん」がユーモラスに描く

 私の手元に、『わが家のリビング介護天国』という一冊の書物が贈られてきて、それを手にし一挙に読み切った。とても親しみの感じる内容の本である。

 話に出てくる大仙公園は私にとって思い出深い場所で、駆け出しの伝道者の頃、この公園のすぐ側にあった教会で聖書を学び、祈り合間を見ては公園をよく散歩した。さらに「わが家」のリビング」で「介護」ということで、その開拓の苦労話は、私が経験した開拓初期の「家の教会」で経験した事に多くの類似点を見ることができ、大変親しみを感じた。また、大阪弁のタッチで描かれているのは庶民派関西人で、特に河内育ちの河内弁で育ってきた私にとっては、格別な思いを抱くものである。

 登場人物は、自我をむき出しにして本音をぶつけ合い、なんの飾り気もなく、ありのままをさらけ出している。それを「おセイさん」の筆でユーモラスに表現されていくのは、「渡る世間は鬼ばかり」の橋田寿賀子のテレビドラマの世界を彷彿させる。

 誰かが、他の人の必要に用いられたいと考える時、相手の目線にしっかり合わせ、「何事でも、自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい」(マタイ7章12節)と言われるイエス・キリストの言葉を理解することが必要だ。読んでいくと、ユーモアの中で、そのような大切なことを想起させられる。

 「介護」の問題は、世界一の長寿国、日本においては、すぐそこにある私の事として、私の家族の問題として立ちふさがる。この本は、読者に、その人の生きる姿勢、人生観を問いかける。

 著者の聖子さんにおいては、続けて作家活動にも精出され、生まれてきたことの意味、また自分の価値を忘れがちなっているお年寄りに、活力と勇気を与える著書を出版されることを期待する。