ブック・レビュー 『日本宣教と天皇制』

日本宣教と天皇制
菅原 正道
日本同盟基督教団 上田聖書教会 牧師

まことの神の国に仕えるために

 日本宣教にとって天皇制は新しい問題ではない。本書に掲げられている参考文献の多さがそれを証ししている。四人の執筆者はそれぞれのアプローチによって鋭く天皇制を分析し、課題を浮き彫りにしてキリスト教会(私たち)と天皇制の関わりについて深い示唆を与えている。

 クリスマス・シーズン、商店街には「祝新宮様誕生」というステッカーがクリスマスセールのポスターの上から貼られ、クリスマスの飾りとともに「日の丸」が商店街に掲げられていた。相変わらずのキリスト抜きのクリスマスに加えて、この異様な光景を目にした人も少なくなかったであろう。国民の大多数は天皇家に心からの好意をもっているのである。

 櫻井氏は「キリスト者として天皇制をとらえるには、学びとともに少なからざる覚悟も必要」であると指摘する。天皇家に対する一般的な好意は、これに逆らう者に対する悪意に変質することがある。

 また神社参拝を拒否した「美濃ミッション」に対する嫌悪、排撃運動のすさまじさを石黒氏は著している。この宗教的排他性は天皇制の本質の一つのあらわれである。瀧浦氏は、聖書から、天皇制が帯びている宗教性についての問題を洞察している。

 歴史の事実に学ぶということが四人の著者に共通の方法であるように思われる。私たちには、そうすることができなかった人に心情的に寄ってしまうという弱さがある。そして今日、当時を非難、批評することは控えるべきだという論調もある。私たちは謙遜に、しかし学ぶべきことは学ばなければならない。そのために最適な書である。

 日本を再び「天皇を中心とした」国にしようとする動きが急な中、よく分からないままでいることは許されないであろう。なぜなら、上中氏の言うように、天皇制とは何なのかを問うことは、私たちが何を信じ、何を伝えているのかという問いかけに他ならないからである。そして唯一の神への信仰を曖昧にした時、教会は罪に陥るのであるから。