ブック・レビュー 『武将高山右近の信仰と茶の湯』

『武将高山右近の信仰と茶の湯』
小坂忠
ゴスペル・シンガー/ミクタム・ミニストリー代表/日本フォースクエア福音教団・秋津福音教会牧師

日本宣教に一筋の光を差し込む一冊

 三浦綾子さんの『千利休とその妻たち』を読んで以来、茶道とキリスト教の関係に興味を持つようになった私は、著者の前著『茶の湯の心で聖書を読めば』が出版された時にも真っ先に拝読させていただいた。

 前著では主に茶道の中に秘められた聖書世界に視点を置いていたが、今著では利休七哲の一人である高山右近の信仰者としての姿が明瞭に描かれている。両著は共に補うものであると前書きに書かれているが、茶人として、武将として、信仰者として、この三つがそろってはじめて真の右近像が見えて来るのである。

 そしてこの本は単に過去の研究にとどまらず、現代に生きる私たちが仕事、文化、信仰に対してどのように対応して行けばよいか、日本人クリスチャンとしてのあり方が問われているように感じた。

 「なぜ日本では宣教が進展しないのか」「日本宣教の突破口はどこにあるのか」は大きなテーマである。著者も「日本人としての文化と伝統を持ち、日本人として胸を張って生きている人たちに、どうしたらこの福音を届けることができるだろうか、と私の模索が始まった」と前著で書いている。

 その思いから、四百年以上も前の日本に信仰を貫くために殉教を受け入れ、妥協のない道を選択した大勢の先人たちが存在していたことに驚き感動し、その中でも傑出した人物である高山右近を研究されるに至った。

 しかし、徳川幕府のキリシタン禁令によって一切のキリスト教に関する足跡が消し去られた日本の歴史からそれを掘り起こそうとするのだから、作業の困難さは計り知れない。

 この本には、利休と右近の関係の深さを感じさせられる数々のエピソードが紹介されているが、二人の間にあった師弟の関係以上のものを想像させられてロマンをさえ感じる。

 日本宣教に一筋の光を差し込む一冊である。