ブック・レビュー 『陶芸と聖書』

『陶芸と聖書』
安食 弘幸
日本キリスト宣教団 峰町キリスト教会 牧師

私たちに触れる陶器師なる創造主の手のぬくもり

 今、巷ではちょっとした陶芸ブームです。町のカルチャーセンターをのぞいてみると「陶芸教室」はどこも人でいっぱいです。画一化され、機械化された社会では、自分もその一部にしかすぎないのではと感じる人々が、創造性の発露を求めて一人静かに土の塊と向き合うのでしょうか。

 そんな折りタイムリーな書が生まれました。本書は私たちの教会の月報に「聖書陶芸入門」という題で、20回に渡って掲載されたものが元となってまとめられたものです。 わたしは毎回毎回、心待ちにしながら読んでいました。

 以前『羊飼いが見た詩篇23篇』(いのちのことば社刊)という書を読んだとき、その道の専門家による視点を通して新しい発見に心躍らせた記憶がありますが、また同様の感動を与えてくれます。

「私たちは粘土で、あなたは私たちの陶器師です」(イザヤ64:8)とありますが、この意味がさらに深く心に迫ってきます。

 本書は、陶芸についての深い知識を提供してくれるので、陶芸に興味を持つ未信者の方への証しの糸口として用いることができます。そして、同時に人生の生き方についても光を与えてくれます。なぜなら粘土である私たち人間に触れる陶器師なる創造主の手のぬくもりを、聖書のみことばに照らし合わせながら、しみじみと感じさせてもらえるからです。ときには厳しく、そしてときには優しいタッチで。

 読み進むに従って、読者は、これまでの自分の人生における主の取り扱いを慰めの中にふりかえり、これからの主の御計画を期待と喜びの中で仰ぎ見ることができるでしょう。そして、私たちはひとり残らず「祝福の基となる器」として造られているという著者の強い確信に励まされるにちがいありません。

 また、著者の陶芸家としての妥協を許さない厳しい創作活動への姿勢とともに、大らかで、ほのぼのとした人柄にも触れていただけると思います。