ブック・レビュー 『 正しすぎてはならない-Let it Be 』

『正しすぎてはならない Let it Be伝道者(コヘレト)の書の翻訳と解説』
鈴木 茂
保守バプテスト同盟 仙台聖書バプテスト教会牧師

神の視点からすべてを見直すことの大切さ

 「伝道者の書」を一度じっくり読んで意味を味わってみませんか。伝道者の書には深く考えさせる表現や、まためいたことばなどもたくさんあり、興味深い書です。このたび、高橋秀典牧師が執筆された「正しすぎてはならない」に出会うことができて幸いでした。
著者が執筆されたどの本にも共通することですが、神の教えの意味を単に解説しているのではなく、自身が神の前で問い、問われる関係の中で気付かされた知恵を、聖書のことばと重ね合わせるように、牧会者の心で私たちに語ってくださいます。牧会者の視点や心遣いが、みことばの適用やお勧めなどから特に感じられ、ソロモンのことばが解説を通して自然に心に流れこんでくるようです。気付いてみると心が軽くなり、また日々の生活の中に押し寄せてくる悩みや試練の波を新たな視点から見られるようになり、新たな希望や平安が心に与えられています。
本書を通して、人生において創造者なる神の前で静まり、これまでの人間の歴史や自分の人生を見渡し、また自分自身の心や歩みを正直に振り返ることの大切さを改めて覚えさせられます。
伝道者の書は、ソロモンの壮年期の危機の季節に書き記された「告白」のようにも思われます。ソロモンは危機の季節を通りながら、創造者を畏れることを、虚しさという痛みを通して体得したとでも言えるでしょう。
多くのきらびやかな成功や祝福の中で、同時に「虚しさ」を嫌というほど味わったソロモンの告白から、私たちも神を畏れつつ人生を見直すことが、これからの歩みに新たな思いと希望をもって向かっていく力になることを教えられます。
著者が、ソロモンとともに主を畏れることを学ばれた実際の歩みが、読者を励ましてくれるでしょう。私にとっても人生と自分自身の信仰者としての歩みを神の視点から見つめ直す、良き機会となりました。本書は信仰者にとって、旅の友となりそうです。