ブック・レビュー 『Wonderful!』

『Wonderful!』
徳永 大
日本福音キリスト教会連合・門戸聖書教会 牧師

かわいいイラストと子どもにも分かるたとえで愛を語る

 「わたしの目には、あなたは高価で尊い。」(イザヤ43章4節)

 昨年「世界に一つだけの花」という、SMAPの歌が流行りました。「ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」──こういう歌が生まれてきた時代の空気をある人が「もはや時代が求めているのは〈癒し〉ですらない〈赦し〉だ」と評していましたが、妙に納得させられました。

 私も、一説教者として講壇に立つ時、そういう時代の空気をひしひしと感じさせられています。罪を語る以前に、そこには罪意識でぺしゃんこになっている人たちがおります。悔い改めを説くよりも早く、悔いの海で溺れている人がいます。隣り人への愛を語ろうとしても、そこには自分をどうしても愛することができないでいる人たちがいる……。

 ルケード作の絵本『たいせつなきみ』風に言うならば、「おまえはだめだ! 役立たずだ! 愛されるに値しないものだ!」と〈だめ印シール〉を全身に貼りまくられた人たちが、教会の座席のかなりの部分を占めているのです。

 そういう「痛んだ葦」や「くすぶる燈心」のような人たちに福音をどう伝えるか──『Wonderful!』は、その一つの試みのようにも思います。かわいいイラストと子供にもわかる日常的なたとえに、すーっと引き込まれるうちに、ルケードは知らずしらず読者を十字架のもとまで案内します。そして、神が愛してくださっている自分をすら愛せない現代人に「きみはすばらしい!」と語りかけるのです。

 もとよりこの本が十字架のすべてを説明しているということではありません。ただ、十字架に暴かれている自らの罪の悲惨を直視できるようになるためには、人はまず神様の愛の中に十二分に受け入れられ、抱かれる必要がある──ルケードという人の本を読む度に、私はそういう温かくもリアルな人間理解があるなあ、といつも感じさせられるのです。