ブック・レビュー しなやかに夫婦のあり方を変化させる


朝岡勝
日本同盟基督教団 徳丸町キリスト教会 牧師

いまや日本中で最も多忙な伝道者を夫に持つ著者の、一人の女性、妻、母、若い方々のよき導き手として語ってきた珠玉の言葉が、美しい装丁の一冊の本となりました。本書は、著者の家庭で続けられてきた結婚前後の学びの中から生まれたものです。内容は豊富で具体的。時には身につまされ、時には思わず声に出して笑ってしまうようなエピソードが満載です。ご夫妻を知る人が読めば、いっそうリアリティが増しますが、そうでなくても人柄が伝わってくるでしょう。内容は「結婚前に話しておきたい9つのこと」「結婚後に話したい9つのこと」「結婚セミナーQ&A」からなっており、各単元の終わりには適切な問いかけと勧めが短く記されていて、とても行き届いた本です。
結婚のために準備を始めている二人だけでなく、将来のために祈り始めているかた、新婚カップル、子育て中のかた、熟年を迎えて二人の時間を過ごしているご夫妻、そしてシングルとして生きているかたなどにもぜひ手にしていただきたいと心からお薦めします。教会の集まりでも、家庭でも、それぞれの用い方によって、よい気づきが与えられるはずです。それにしても、プライベートな空間であるご家庭のようすをここまでオープンに語る本書は、著者の献身の表れです。しかもそれが眩しすぎて近寄りがたいものでなく、私たちの欠けや弱さにも寄り添い、励まし、後押ししてくれる愛に満ちているのは、著者が自らも学びつつ、教えられつつ、しなやかに夫婦のあり方を変化させている、その謙遜さ柔軟さと寛容さのしるしでしょう。最後に、評者の心に最も響いた言葉が「愛は、届かないと愛ではありません」(一五頁)。「愛しているつもり」のところでとどまっていて、相手に届くところにまで心を込め、誠実を尽くしていただろうか、と問われています。愛することによって愛の足りなさを学び、愛されることによって愛の豊かさを学び続けていくのでしょう。本書を読み終えるとき、私たちは気づきます。大嶋家の小さな食卓に招き入れられていること、そしてその食卓に主もまたともにおられることを。