ブック・レビュー 今年のクリスマスプレゼントはこの本で決まりっ!

 『ホンモノノマチ』
井ノ上歌歩
日本ホーリネス教団井土ヶ谷教会員 中学三年生

―イルミネーションされた街路樹は、ゆらゆらと風で揺れるたび、まるで魔法のようなきらめきを放ちます。そして、いたるところに色とりどりの飾りがつり下げられているのです ―
一瞬で物語の世界に引き込まれました。ことば一つひとつがまさしく“魔法のようなきらめき”を放っていて、自分が本当にクリスマスの街に足を踏み入れたかのようでした。

舞台は「クリスマス」という街。主人公ディランが、彼のいとこクレアとともに、様々な試練や誘惑に立ち向かう四日間を描いています。
ふたりが旅に出ると、話は急展開の連続。まるでたくさんのアトラクションを一度に体験しているようです。中学生の私がハラハラドキドキできるのですから、きっと小学生から(いつまでも気持ちの若い)大人の方まで楽しめるはず。この冬一番の、素敵なファンタジー小説です。
かといって、ただ単に冒険物語では終わらないのが、この物語の醍醐味です。舞台となっている場所や登場人物の名前は、至ってとてもシンプル。少し考えれば、作者の意図していることが何であるかを想像できます。……そこが味噌なのです! 作者の意図がわかるからこそ、読み進めてゆくと、信仰生活で神様に従いきれていない自分が目に浮かんできます。耳の痛い思いをたくさんしました。主人公たちが、罪を振り返り落ち込む姿と、日々の自分とが重なったのです。

「あなたは、ずっとクリスマスにいたいですか?」

そう問われたディランはきっと、このことばをそのままの意味で捉え、答えを探したでしょう。しかし私には、こう問われているように聞こえました。
「あなたは、ずっとクリスマスにいるような気持ちで生活できていますか?」
胸を張って「ハイ」と答えられる自分を求めて、あなたもホンモノノマチへ行ってみませんか。

『ホンモノノマチ』
スター・ミード 著
中嶋典子 訳
四六判 1,365 円
いのちのことば社