ブック・レビュー 変わることのできる希望

大嶋重德
キリスト者学生会 副総主事 学生宣教局長

 

野田詠氏牧師の本が出た。出版記念講演は大勢の人が詰めかけた。彼の講演や説教を聴くと、次から次へと笑いが溢れる。自分が逮捕されたシーンまで大爆笑のストーリーへと変える。そして必ず非行少年は変わることができるのだと、薬物中毒に陥っている少女も家族も変わることができるのだと、イエス・キリストに出会うならば、悲しい過去をも笑える日が来るのだと、著者は自分の人生を笑いに変えながら、変わることのできる希望を本書に記す。

何よりも本書は、衝撃的なタイトルである。しかしこのタイトルの続きには「わたしの育て方が悪かったんです」という母の言葉がある。著者はこの母の言葉を母が自分に謝る言葉として聞く。そして著者は記すのだ。「親でも間違うことはある。そんな時、親は謝ることで、子への『親の威厳』を失うのだろうか?……そうではない。かえって、その親の潔さに『謝ることの大切さ』を教えられる」と。

野田牧師の牧会するアドラムキリスト教会が生まれて十五年が経つ。「もうやめよかと、ほんまに思うんです。」何度少年院を訪ね、何度身元を引き受けても、平気で裏切られ、家族の犠牲と持ち出しの多さの前に著者はためらいを隠さない。しかし著者はチェンジングホームを始める。ためらいながらも「自分にはこれしかない」と自分が神に召された奉仕に生きようとする。この誠実な歩みは、内閣府からの招きによって政府からも注目される。

私たちはコンビニ前に座り込む少年少女を目にしたり、川崎での少年殺害の事件を見聞きすると、教会は何かできなかったのだろうかと思いを馳せ、心を痛める。日本のキリスト教会に、野田牧師のような存在がいることの心強さを思う。非行少年の世界へと遣わされた宣教師のように働く彼から学びたい。痛めた心を野田牧師の働きに向け、祈り支えたいと思う。今もアドラムキリスト教会には、子どもが薬物をやめることが出来ずに教会の門を叩いた親御さんたちが、教会につながり続ける。「どうすれば教会は、少年少女や家族に寄り添うことができるのか」私たちは、まずはこの本から学ぶことができたらと思うのだ。

 

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