ブック・レビュー 生きた人間に現された神の救いの物語


高橋秀典
立川福音自由教会牧師

「仏教の開祖は仏陀、イスラム教の開祖はムハンマド、そして、キリスト教の開祖はイエス……」と小学校で教わった子が「何かおかしい……」と悩んでいました。なぜなら、天地万物の創造主は、アブラハム、ヤコブ、モーセ、ダビデという人々を通して、もっと前から、ご自身の救いのご計画を啓示されてきたと教会で教わっていたからです。
カバーには「失敗ばかりの愛すべき登場人物たち127人」と記されていますが、まさにこのことばに聖書の醍醐味が描かれています。聖書を初めて手に取る人々にとっては、まず、なじみのないカタカナの名前に困惑することがあるかもしれませんが、本書を横に置きながら聖書を読み始めると、その内容が生き生きと迫ってくることでしょう。
旧約聖書は特に、登場人物の過ちや欠点をも赤裸々に描きます。その代表例はヤコブですが、イスラエル民族の呼び名は彼に由来します。本書で千代崎先生はヤコブをはじめとする登場人物の生涯を、ユーモアを交えて生き生きと簡潔に描き出してくださいました。それぞれの物語に読者自身の人生の物語が共鳴するときに、神の救いのご計画が身近に迫ってくることでしょう。
イエスは私たちにとって救い主(キリスト)であり、神ですから、他の人物と同列に扱うことはできませんが、本書はあえて、一般向けに、イエスに関する基礎知識を提供してくれています。これを書かれた内田先生の要約力にはほとほと感心します。これほど簡潔にイエスの生涯と教えをまとめた文章は他に類を見ないものと言えましょう。
その他の人物に関しての描写にしても、それらの名前がその後の歴史にどのような影響を与えているかの解説も含め、まさに一般教養としての聖書学の入門書にふさわしいものと言えましょう。新約と旧約、それぞれの人物事典もとても簡潔で、すでに聖書に長らく親しんでおられる方々にとっても、身近に置くべき参考書と言えましょう。
また、収録されているレンブラントの絵画や、聖書の舞台である現地のカラー写真もとても美しく、お茶を飲みながらの話題としても役に立てていただけることでしょう。

『聖書人物伝
これだけは知っておきたい127人』
千代崎秀雄、鞭木由行、内田和彦、杉本智俊、岸本紘 共著

A5変判 1,800 円+税
フォレストブックス