ブック・レビュー 自分の死生観と向き合う


鈴木敦子
保守バプテスト同盟 仙台聖書バプテスト教会 教会員

本書は、二〇一二年十一月に淀川キリスト教病院内に開設された、日本で初めてとなるこどもホスピス病院を紹介しながら、その関係者らの手記を通して、子どもの死、ひいては自分の死生観と向き合うことを考えさせる内容になっています。
第一章「子どものいのち」では、十分な言葉で心を表現できない子どもの死への不安や悲しみ、また親の苦しみをスピリチュアルなテーマとして取り上げています。第二章「子どもとホスピスケア」では、モデルとなったイギリスの子どもホスピス「ヘレンハウス」の紹介と創設者の講演記録、また日本のこどもホスピスの施設の紹介と、開設から二年半にわたる診療とケアの報告が記されています。第三章「天国へ旅立った子どもたち」では、大学病院やこどもホスピスでわが子を看取った親たちの手記とスタッフの感想が、愛情深く報告されています。
大人のホスピスというと、人生の最期のときを少しでも快適に、尊厳をもって過ごせるようにするところと考えられていますが、このこどもホスピスの理念は「こどもの望む場所で家族、仲間と楽しく過ごすことを支える病院」とし、「看取り」にこだわらず本人や家族の希望を最大限に尊重するようにしています。つまりこのホスピスは「施設」というよりも、サポートする「概念」を大切にし、それを「病院らしくない病院」として具現化しようとしていることが分かります。 幼くして死と向き合わざるをえない子どもらは、大人以上に人生、死、苦しみの意味について考え、痛みながらもよい子であろうとし、親を気遣います。そんな子どもを前にする親の心の痛みは、同じ子を持つ親として想像を絶するものです。子どもに対する緩和ケアだけでなく、レスパイトケア(介護者のためのケア)、終末期、死別後のケアも含めてこれまでの臨床例を読むとき、何が起こっても受け止め、支えてくれる場所があるという安心感を、私は感じることができました。また同時に、自分は幼い子にどう死を語ることができるのか、を問われています。