ブック・レビュー 被災地が見えてくる、聞こえてくる

 『被災地からの手紙』
三橋恵理哉
単立 札幌キリスト福音館牧師

「『二〇一一年三月十一日以後』を生きているすべての者に、差出人を神とする『被災地からの手紙』が差し出されているのだろう」(「あとがきに代えて」より)
これは、この手紙をつづった筆者自身の認識であるが、実際読み終えてみると、差出人は神様だなとうなずける。

東日本大震災に対しては、人によって教会によって温度差があるのは事実だし、ひと言では語れない。だが、人として、キリスト者としてどう向き合うのか本書は問いかけてくる。聖書の中の「手紙」に触れたときのような感さえする。単に震災支援活動レポートではない。ここには個人レベルでの思いや、考えではとどめることができない、神からのメッセージがある。
だからと言って、決して説教くさくはなく、等身大のリアルな世界が広がっている。読むものすべてを「被災地」に引き込んでしまう。
神に立てられた筆者が、直接赴き、耳を傾け続けてきたからこそ、マスコミや報道等からは見えてこない「気づき」であふれている。
「目には見えない『境界線』」、「『距離』の壁」、「子どもたちが感じた内なる恐れ」、「在宅避難者」、「この地域の方々は(神を)『信じない』んじゃありません。信じないも何も、(福音を)『聞いたことがない』んです」、「信仰は、『命の選択』ですものね」
本書は八十七ページのブックレットで、手軽に読めるボリュームだがサラッとは読めない。何度も立ち止まらせられる。日本で福音が届くと言うのは、どういうことかを考えさせられる。
ボランティアとして直接、間接的にかかわった方にはよいフィードバックになる。何かをしたいという思いはあっても行動まで結びつかなかった方には、震災を共有するのに役立つ。
日本宣教に召されている宣教師の先生方にもご一読いただきたい。英語訳にしても、残したい一冊である。

『被災地からの手紙
from 岩手』
近藤愛哉 著
A5判 840 円
いのちのことば社