ブック・レビュー 21世紀ブックレット26
『「健全な信仰」と「カルト化した信仰」』

『「健全な信仰」と「カルト化した信仰」』
永堡智
日本同盟基督教団 新津福音キリスト教会牧師

真の指導者とはどのような牧会をするのか

 この本は、『教会がカルト化するとき』の続編です。エホバの証人や統一協会という破壊的カルト集団だけでなく、キリスト教会にも「カルト化」の影響が出てきているという警告をしています。

 「カルト化」は、指導者に対する依存心を醸成します。そして「極端な聖書解釈」で「信仰」「預言」「みこころ」という言葉を用いて心を束縛し、恐怖心を与え、律法的になり、悩む信徒をさらに苦しめてしまうのです。

 指導者自身が自覚しないまま、熱心さのあまりされているのかもしれませんが、その方法は、聖書が示す指導者像とはかけ離れているように思います。本書では、それは聖書解釈のゆがみから生じていると指摘されています。

 ウッド先生は、この本を通して、カルト化した信仰が、信徒を神にではなく組織や指導者に依存させる実態を、実に明快にしています。興味深い実例として、最近悔い改めた「ある教団」の実例も挙げられています。

 マインド・コントロールに気づくことは、カルトに詳しい方に相談しない限り、回復は困難です。今なお、カルト化した教会の中で苦しんでいる人々が絶えず、多くの相談があるということです。一度、人がマインド・コントロールされると、その人の健全な信仰回復にどんなに時間と努力が必要か、著者はよく知っています。そして回復への手助けを実践しているからこそ、この様な啓発に満ちた本が世に送り出されたのではないでしょうか。

 著者は、真の霊的指導者はどのように牧会するのかを最後の章で述べていますが、その章は十分に耳を傾ける価値があります。そうでないと多くの信徒や牧師を傷つける結果になるからです。これは牧師だけでなく、信徒指導者にも適用されるでしょう。周囲の人びとを気にしてなかなか自律的思考や行動のとりづらいカルト化しやすい日本の風土の中で牧会する牧師と信徒指導者にとって必読の書であると思い、お薦め致します。