ルケード大研究 人に優しい眼差しが

物語は年代・国境を越えて
マックス・ルケード
作品から人柄まで徹底的に伝えます!

鴻海 誠
フォレストブックス編集長

鴻海 誠 マックス・ルケードという人物を意識するようになったのは、1997年夏、アメリカを訪れた時からだった。アトランタで催された全米のキリスト教書店によるブックフェアで、『グリップ・オブ・グレース』(In the Grip of Grace)によって自身二度目のゴールド・メダリオン(最優秀賞)を受賞し、注目を集めていた。

 しばらく後、セントルイスで行われたプロミスキーパース(アメリカで広がった男性の信仰復興運動)の集会に行くと、ルケードがゲストスピーカーとして立てられていた。青年っぽさの残る風貌ながら、巨大なスポーツセンターを埋め尽くした聴衆の心を深くとらえて語っていたのが印象的だった。

 1998年になって、ホーバード豊子さんというアメリカ在住の日本人女性が、一冊の絵本を自ら翻訳し、編集部に送ってきた。編集者たちが一読して「すばらしい!」と感動し出版したのが、『たいせつなきみ』である。その著者がルケードだった。

 そんなわけで、私のうちにルケードはどんどん大きな位置を占めていった。2001年には、彼の牧会する教会を、メキシコ国境に近いテキサス州サン・アントニオに訪ねる機会を得た。オークヒルズ・キリストの教会と名づけられた彼の教会は、郊外の静かなたたずまいの中にあった。ブラジルの宣教師を務めてきた30代前半のルケードが、その教会の牧師としてきたのは、1987年のことである。当時550名だった礼拝出席者は1,200名近くになっていた。

 教会の若い女性スタッフが、礼拝堂や教会学校施設などをていねいに案内してくれた。そこで知ったのは、オークヒルズ教会の子どものたましいに対する重荷だった。ルケードのメッセージが、子どもにもよくわかるようなイラストレーションとして語られ、描かれるという特徴は、彼の牧会の中から出てきたものであることを見た思いがした。

 「あなたはどうして物語を通して語るのですか」との質問に、「私自身物語が好きなんです。イエスさまも物語を好んで用いられた。年代や国境を越えることができるのが物語の素晴らしさだと思う」と答えた。

 彼の著書の総発行部数は2,800万冊という驚くべき数に達している。あのビリー・グラハムが20年かかって到達した数字を、ルケードは10年で超えてしまった。

 にもかかわらず、直接会った彼は、決してオーラを発するカリスマ・ライターではなく、人に優しい眼差しを向け、物静かで飾らない一人の牧師だった。そこに、米国大衆の間で愛されてやまない要素があるのだろうと思った。