今を生きるクリスチャンに役立つ『リフォームド神学事典』 3人の監修者による対談 [3]

『リフォームド神学事典』

■現代社会でのクリスチャンの立ち位置が確認できる

村瀬
 今年はカルヴァン生誕五百年。この本の中でも、カルヴァンを基準にした記述が多いのです。その意味でも本書の日本語版が今年出版されたのは良かった。カルヴァンは本当に実践的な人でした。書斎の人と思われがちですが。聖霊を大事にして、その導きによる信仰生活を重んじた。マッキムさんが序論に書いておられますね、「改革派信仰はキリスト者の生き生きとした信仰である」と。改革派信仰は理屈っぽいという間違ったイメージがありますが、そうじゃないんですね。
石丸
 私も、今回の事典の監修にあたってカルヴァンのことを勉強し直して強く感じているのは、リベラルアーツ(一般教養)の大切さ。私たちが、キリスト者として生きていく、現代社会の一人として使命を果たしていく。それにあたってのリベラルアーツ。今色んな大学でそういう学部が増えていますが、実際ヨーロッパの大学はリベラルアーツで始まっている。カルヴァンがどれほど、人文学者として、古典学者としてその手法を大事にしたか。自分の神学にもいかに取り入れ、活用したか、それを今回もう一度学び直しました。本書にはこうしたカルヴァンに触れた部分が数多くあります。寄稿した方々の理解のなかに、そういう視点があったということを感謝しながら読みました。
村瀬
 私が知っていた改革派、リフォームドの伝統は、全体のほんの一部分であったと思いました。改革派伝統はもっと広く豊かなもので、この世と対話していくものだということに、目を開かれました。たくさんの知的な刺激と、霊的な祝福を頂きました。だから、この困難な翻訳作業ができたのかもしれませんし、倒れそうになっても倒れなかったのかもしれません(笑)。この仕事の中に、わくわくするものを感じました。
 一般的な教養は、霊的な深みを増すためにも必要だと思います。要はバランスの問題です。神と人間とのバランス、教会とこの世とのバランス。そういうことも本書から教えられました。
石丸
 私自身がこの本を通して学び直したのが「順応」ということでした。啓示についても受肉についても、神様がその恵みや意思を罪ある人間に知らせるにはどうなさったのか、ここに打たれましたね。
村瀬
 カルヴァンは、その順応ということを大事にしたのですね。神様のほうからへりくだって私たちに仕えてくださっているという事実を。
石丸
 われわれは、神学校では類比ということは学んだけれど、順応ということは本格的には学んでいなかった。順応については本書では八か所の言及があるんですね。
望月
 そのほかに、私がこの作業を通して受けた恵みは、神学の全体像をつかめたということにつきますね。別な言い方をすると自分の立ち位置がつかめた。調べる事典としてだけでなく、読み物として通読できることもありました。
石丸
 だからこそ若い方にぜひこれを読んでほしい、特に神学生に。また、教会で勉強会などに使うとよいのではないかと思います。たとえば礼拝、聖礼典、洗礼、主の晩餐、賛美歌、牧会などの項目ごとに。連続して学んでいくと益が大きいと思いますね。
―本日は、ありがとうございました。