天国へのずっこけ階段 最終回 とりなしの祈り

松本望美
北朝鮮宣教会所属/韓国在住

 私の所属する団体は北朝鮮宣教をしており、私もよく教会に招かれて宣教報告をする。そこで「日本から来た宣教師です」と自己紹介をすると、多くの韓国人は「日本人の宣教師? 日本から宣教師が派遣されているのか!」とか「クリスチャン人口が少ない中の貴重な宣教師ですね!」など「まず」言う。その後、教会の牧師や長老と食事をするのだが、必ず日本の話になる。

 「日本は、大きな地震が多いし、洪水もあるし、天災が多い国だね」とある長老が言うと、「日本は神様から祝福されない国だからかわいそうだ」とほかの人が言う。また「その点、韓国は三〇パーセントもクリスチャンがいるからね。韓国は神様から本当に愛されている国だ」と嬉しそうに高笑いしていた。最初のうちは私も 「なぬー!?」と思ったものだが、最近は「そんな日本のためにぜひ、お祈りしてくださいね」と言う余裕が出てきた。

 日本で宣教したことがある韓国人牧師と話したとき「日本はね、いくら伝道しても無理ですね。悪魔に囚われているから。伝道が世界で一番難しい国」と言われたこともある。

 ある時、ロサンジェルスにある韓国人教会の礼拝で、日本人クリスチャン二十人が日本語で賛美する機会があった。私たちが歌い終わったあとに、牧師が「日本のために祈りましょう」と呼びかけ、そこにいた数百人の韓国人クリスチャンが日本のために祈ってくれた。

 私たちも壇上に上がったまま祈ったのだが、私は涙が出て祈れなくなった。泣いているのは私だけではなかった。壇上の日本人だけでなく、礼拝堂にいる韓国人の多くが泣きながら祈ってくれていた。

 私は、本当に日本は愛されている国だと思った。日本は、滅ぼされて当然なのかもしれない。しかし、神様はそんな日本をあきらめない。多くのとりなし手を起こし続けていてくれる。神様の日本への情熱がそうしているのだと思う。

 ある教会に行った時、六十代ぐらいの女性が「日本のためにお祈りしていますよ。望美宣教師も日本のために、世界のために一緒に断食しながら祈りましょう」とハキハキした声でいう。「一緒に山の祈祷院に行って、三十日間断食しながら祈りましょう!」と言われた。はあ? 三十日!? 神様、すみません。急いでいるふりして、逃げてしまいました……。

*本連載は執筆者の帰国により終了し、次号からは同氏による「四十路へのずっこけ恋愛道」がはじまります。