子どもたちに今! 伝えたい
「性といのち」の大切さ… 第16回 挙式前の婚姻と同棲

永原郁子
マナ助産院院長

私が信仰に導いた友人のことです(といいましても、彼は結局別の教会に行ってしまったのですが)。バプテスマを受けてまだ日の浅かった友人は、未信者の女性と結婚することにしました。彼女の提案だと思いますが、まず二人は婚姻届を出して同棲を始め、その後教会で結婚式を挙げてもらおうとしました。ところがすでに同棲しているという理由で難色を示した教会員がかなりいたので、友人は戸惑ってしまいました。友人は、入籍すれば同棲しても構わないと思っていたようでした。この入籍、同棲、挙式という流れは、未信者の友人の間ではよく見られますが、どうしたらいいものでしょうか。(東京都 四十代男性)

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友だちのことでつらい思いをされましたね。友だちは結婚式を挙げる前に婚姻届を出して、結婚生活を始めていたわけですね。同棲というと婚姻関係がなく、男女が一緒に暮らすことを指すほうが多いように思います。また結婚の意思のない同棲もあれば、いずれ結婚するけどその前に同棲の期間を設ける場合もあるでしょう。友だちの場合はそのような同棲というより、入籍して結婚生活をスタートさせた後、折りを見て式を挙げよう考えられたのでしょう。私はここ数年で日本人の結婚の形が多様化してきていると実感しています。友だちのケースもその一つでしょうし、二〇〇九年の厚労省の統計では二十五・三%、四組中一組が結婚前に妊娠しているという結果が出ています。結婚式、入籍、妊娠という順序にとらわれない生き方が社会的に認められる風潮が定着してきています。
私が助産院を始めた一九九三年頃は、結婚前の妊娠はシークレット、公にすることはまずありませんでした。しかし、その二、三年後には芸能人のできちゃった婚の報道をよく耳にするようになり、瞬く間に一般の人たちの間にも広まりました。今や結婚式場にはマタニティー対応のウエディングドレスが当たり前のように用意され、妊婦健診の途中でカルテの名字が変わることも珍しいことではなくなりました。順序はともかく、お腹に宿った小さないのちを守ることを優先しようと考えるようになったという点においては喜ばしいことだと思います。しかし、人生の大切な節目を自分の意思をもって決断して通過していないという点では問題を感じます。また、このように生まれてくる小さないのちの陰で中絶されているいのちの数も増えることが危惧されます。
ローマ人への手紙12章2節には「この世と調子を合わせてはいけません」とありますが、ご質問の「結婚」についても、クリスチャンとして重視しなければいけない生き方の一つだと思います。
「人が、ひとりでいるのは良くない。わたしは彼のために、彼にふさわしい助け手を造ろう」と、創世記の2章18節に書かれているように、主は男女が人格的に向き合い、愛し合い、ともに生きる特別のパートナーを持つことを認めておられます。そして二人は、結婚式において神さまから祝福を受けて、新しい生活を始めます。挙式はそのための厳粛な儀式です。人間的には言えば、今まで育ててくださった方々へのお礼と、これからもご指導くださいという挨拶のときでもあります。派手な式でなくてもいいですから、このような意味をかみしめて結婚式に臨むことをお勧めします。その前に主のみ前で婚約式を挙げることもあります。挙式までの一定の期間、さらにお互いを理解し合い、新しい生活の準備をしていきます。順序立てて書きますと、婚約式、結婚式、入籍、そして二人の新しい生活を始めるのが本来のあり方でしょう。
私は青年クリスチャンたちが主に祝福された幸せな結婚生活を始めるために、聖書に基づいた婚前セミナーや、結婚カウンセリングなどの学びをする必要があると思います。世の中の結婚の常識が聖書とかけ離れてしまっているのですから、教会でもこのようなプログラムをぜひ考えていただきたいです。
とは言え、クリスチャンであっても、今回の友だちのように挙式の時期を後回しにしなければならない事情がある場合や、妊娠してから結婚式を挙げるということがないとは言えません。そのような場合は、主のみ前に心から悔い改めて、主に赦しを求めた上で結婚式を挙げることが望ましいと思います。いやむしろ結婚する二人の今後の信仰生活のために、そうすべきだと思います。子どもたちの性の問題も含め、多様化した結婚の形に対して、教会がどう対応していくかを考えていく必要があると思います。