時代を見る目 177 裁判員制度に臨んで<3>
祈りと信仰によって職務を遂行しよう

湊信明
日本福音キリスト教会連合・キリスト教朝顔教会員 弁護士

 裁判員制度で審理される事件は、殺人、強盗致傷などの重大犯罪です。中には、連日のようにマスコミが報道し、多くの人々が興味本位に?するような事件を審理することもあるでしょう。読者の皆様が、このような事件の裁判員に選ばれたら、マスコミや周囲の人たちに影響されずに、正しい判断をすることができるでしょうか?

 ポンテオ・ピラトは、自らは、イエスに対して罪を認めないと言いながら、群衆を敵に回すことを恐れ、イエスを十字架に引き渡してしまいました。一方、ピラトの妻は、このとき、ピラトに対し、あの正しい人に関係しないでくださいと言い、ピラトの判断に影響力を及ぼしています。

 裁判員法第101条第1項は、何人も裁判員の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならないとし、同法第102条第1項は、何人も被告事件に関し、当該被告事件を取り扱う裁判所に選任された裁判員に接触してはならないなどと規定して、裁判員に対して不当な影響力が及ばないように配慮をしています。

 しかし、裁判員裁判において裁判員は、被告人に死刑を下さねばならない局面に立たされることもあり得ます。裁判員が、死刑判決に賛成するか否か、悩み苦しむこともあるはずです。

 ピラトも、イエスを十字架に引き渡すかどうかとても悩み、群衆や妻から、その判断に影響を受けています。裁判員は、判断に迷ったとき、家族や知人に相談して結論を出して良いのでしょうか?

 この点、裁判員法第108条第1項は、裁判員が評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するとされていますので、裁判員が第三者に相談をもちかけると処罰される可能性があります。また、同法第106条第2項で、被告事件の審判に影響を及ぼす目的で、裁判員に対し事実の認定、刑の量定等について意見を述べ又はこれについての情報を提供した者は2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処するとされていますので、相談を受けた相手も処罰される可能性があります。

 このように、裁判員は、国民が興味本位に騒ぎ立てている事件について、誰にも相談することなく、職務を遂行しなければならず、極めて重い責任を負担しています。とてつもない孤独感を味わうこともあるかもしれません。

 ですから、クリスチャンの皆様が、裁判員に選任されて裁判員裁判に臨むときは、クリスチャンだからこそ、神様に祈りを捧げて、信仰に基づいて、孤独に打ち勝って、この重い職務を厳然と遂行して頂きたいと願っております。