時代を見る目 185 子どもの虐待<2>
施設の現実を考える

村田 紋子(むらた あやこ)
日本福音キリスト教会連合 朝顔教会:元児童養護施設職員 短大教員

 虐待を受けた子どもについては、現在は地域の中で支援されることも増えているものの、重いケースでは家庭から離して保護します。その場合、ほとんどが乳児院、児童養護施設に入ります。全国120か所の乳児院に約3000人が、568の児童養護施設には約28000人の子どもたちがいます。現在これらの施設で大きな問題となっているのは「施設内での虐待」です。あまりに事件が頻発した為、昨年基本法である児童福祉法が改正され、施設や里親などに預けられている子どもを、施設長や職員、里親などは虐待してはならないこと、虐待を知った者は通報すべきことが規定されました。それほどに状況は深刻です。

 残念なことには虐待が発生した施設のかなりの数に「キリスト教主義」の施設が含まれるのですが、それらの施設にはある共通の特徴を感じます。まず宗教的な側面が強調される中で、専門的な支援がなおざりにされることです。施設運営で「神様」「信仰」等のことばは多用されるのですが、子どもたちやご家族への専門的な支援が全く欠如しているような例があります。さらには、「赦し」や「愛」が曲解され、当然加害者の責任を明らかにしなければならない時に、それが曖昧にされることもあります。

 キリスト教主義の施設は長い歴史を持つところが多く、かつて誰も省みなかったような困難の中にある方々への支援に、率先して着手してきたという経緯があります。しかし家族親族等で代々運営し、一定の地位や権力を得る中で何かが失われていったように思われます。キリスト者の働きにおいて、神様への信仰は当然のこととして土台に据えなければならないでしょう。しかし自分自身の反省でもありますが、同時に現代においては、きちんと説明できる専門性を備え社会的な組織としての責任を明確にすることも、証としてとても大切なのではないでしょうか。また施設内の虐待の深刻さを考えるとき、施設がいかに一般の人たちの目から遠ざけられ隠されてきたかということも同時に痛感します。虐待のあった施設では、地域の人たちがその施設にはどんな子どもがいるのか、そしてどういう暮らしをしているのか、知られていないことも多くあり、そのために発見が遅れたことがありました。傷ついたまま施設を出ても、周囲に理解されず生きていくことが大変な子どもたちもいました。子どもは自分では生まれてくる場所を選べず、訴える力も弱い存在です。虐待された子どもたちが、一体どこでどのように暮らしているのか、施設を出てからどのように生きていくのかについても、多くの方たちの関心と支援を頂きたいと切に願っています。