時代を見る目 225 東日本大震災に思う [3]

木田惠嗣
ふくしまHOPEプロジェクト代表
福島県キリスト教連絡会代表

福島の原子力発電所で発電された電気は、すべて首都圏に送られていたことを震災後に初めて知ったという県民は数多い。
歴史を繙くと、原発立地地域は、冬には出稼ぎに行かなければ生活できないような貧しい地域であった。1967年、福島原発1号機が着工され、その後、次々に原子炉が増設されていき、日本の54基の原子力発電所のうち10基が福島に建設されることとなった。
その背景には、麻薬のような中毒性をもった「電源三法交付金制度」があると言われている。原発を誘致すれば、原発が稼働するまでの間、国から巨額の交付金が入るのだ。原発が稼働すると交付金の支給は終わるが、代わりに電力会社から固定資産税が地元自治体に支払われる。だがそれは、減価償却税であるため、毎年減額していき、16年ほどで支払いはなくなる。
交付金によって町が建設した体育館や保養施設(当初、交付金は公共施設などに使うように限られていた)などの建物の維持・管理には、莫大な費用が必要で、新たな交付金や固定資産税を得なければ、町の財政を維持することが出来ない。この悪循環によって、この数十年の間に10基もの原子力発電所が建設されるに至ったのである。

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地方の教会では、クリスチャンとなった人々が都市部に流出し、残るのは設立当初のメンバーで、次第に高齢化している。しかも、原発事故に見舞われた福島からは、より多くの若者が県外に流出している。この悪循環が断ち切られることなしに福島の復興はあり得ない。被災地の支援は、被災者の支援であるとともに、今にも倒れそうになっている地域教会の足腰を強くし、体力増進を図ることも重要である。そうでなければ、本当の支援にはならないだろう。
今、福島では、放射能の影響を受けないクリーンな施設を作れば人が集まる。母親たちは、放射能に負けない体をつくる食事や(http://www.foodbq.com/pg102.html)、どんな食材選びが賢いのか、具体的な情報に飢えている。外で遊ぶことができず、ストレスのたまった子どもたちの遊び場を提供すれば、親も子も集まる。
「ふくしまHOPEプロジェクト」の働きは、それらの必要を満たすとともに、高齢化し、足腰が弱っている地方教会の体力回復にも一石を投じるものであると信じている。