時代を見る目 236 「傾聴」でつながるコミュニティ [2] 地域で出会い、つながり、ともに生きる

水谷裕子
NPO法人 アーモンド コミュニティ ネットワーク 理事長
心理カウンセラー

横浜市北部の港北ニュータウン。新たなコミュニティを形成しつつあるこの地で「傾聴」を伝え、カウンセリングを行い、新しい多くの出会いに導かれた。傾聴を学んだ人々はより積極的に隣人の抱える問題にかかわろうとする。聴くことは人に近づくことである。

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横浜市内には、現在2万人のひきこもり状態の青少年(15歳~39歳)がいて、無業状態の青少年は7万人いると推計される。もはや、家族だけで支えることは困難だ。
昨夏、私たちのNPO法人が神奈川県と共催した「ひきこもり地域理解促進事業」では、地域のNPOがつながることで広がりのある支援が始まった。問題が重篤化する前に、また未然に防ぐためにも、その人の訴えと必要に真摯に耳を傾け、表情や行動からも気持ちを聴き、信頼関係をつくり、孤立から救う。市民のボランタリーなサポートの働きは大きい。地域住民が「傾聴」の姿勢と手法を身につけることで、一歩踏み込んだ質の高い見守りと、支え合いの活動が実現する。
キリスト者は、絶望の中に希望を見て進む。福祉システムの枠組みの外で、問題を抱えた一人ひとりに全人的なかかわりで向き合おうするキリスト者たちと「傾聴」を教えることで出会い、当初は予想もしなかった、教会や所属の枠を超えた協働が始まった。
YMCA活動への支援を中心に地域社会への奉仕・貢献を目標にかかげるボランティア・グループ「横浜つづきワイズメン&ウィメンズクラブ」とは、障がいのあるなしにかかわらず楽しめる市民のためのクラシックコンサートを開催している。地域の弱さを抱える人々に仕えるミッションの「NPO法人 五つのパン」からは、既成の枠に当てはまらない人々への支援を、新たなコミュニティ事業として運営していく方法を学んでいる。
相手をそのまま受け容れる「愛」を基として、「聴くこと」を知ったキリスト者がつながり、市民が孤立することのない共生の社会と平和なコミュニティの実現のために働く。新しいことは今、もうそれが起ころうとしている!「見よ、新しいことをわたしは行う。今や、それは芽生えている。あなたたちはそれを悟らないのか。わたしは荒れ野に道を敷き、砂漠に大河を流れさせる」(イザヤ43・19/新共同訳、「NPO法人アーモンドコミュニティネットワーク設立趣旨書」より)「傾聴」でつながるコミュニティ [2] 地域で出会い、つながり、ともに生きる