時代を見る目 240 考え直そう、日本 [3] デンマークに学ぶ再生可能エネルギー立国

牛山 泉
足利工業大学 理事長兼学長

昨年のNHKの大河ドラマ「八重の桜」は、新島襄の妻となった会津藩のハンサムウーマン、山本八重がヒロインであった。同志社の展示室には、新島が友人の内村鑑三と並んだ集合写真がある。2人は群馬県にルーツがあることから、群馬の子供たちは小学校で学ぶ「上毛かるた」で、「平和の使徒 新島襄」、「心の燈台 内村鑑三」と覚えている。また、このかるたができたのが昭和22年であることから、当時の水力発電中心の電力事情を反映して「理想の電化に 電源群馬」という札もある。
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さて、内村の著作に『デンマルク国の話』がある。これは1860年代の、国土の3分の1と70万人の住民を失うという絶望的な敗戦から、現在の豊かな高福祉国家の基礎を築いたダルガス父子の植林活動についての講演である。末尾に、デンマーク国内には「天然の無限的生産力」が、太陽の光線、海の波濤、吹く風、噴火する火山にもあり、「外に拡がらんとするよりは内を開発すべきであります」とある。
この講演がなされた1911年は、日本が日清、日露の戦争に勝って、ますます富国強兵路線を強化しようとしていたときであった。その後、20世紀の2回の世界大戦は、いずれもエネルギー資源をめぐる争いであったといえるが、日本の富国強兵路線は1945年8月に敗戦を迎えた。
戦後しばらくの間は、多くの小学校の国語の教科書に『デンマルク国の話』の小学生版が採用されたが、「戦後は終わった」という掛け声とともに、日本はデンマーク・モデルを捨て、それ以降はアメリカ・モデルの経済大国を目指してきた。その象徴が原子力発電であった。
しかし原子力発電に立脚する経済大国路線も、2011年3月11日の福島原発の事故をもって敗戦を迎えたのだ。

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今必要なのは、同じ路線に戻る「がんばろう日本」ではなく、脱原発先進国ドイツや再生可能エネルギー王国デンマークに学ぶ「考え直そう日本」ではないだろうか。
環境省の最新の調査結果では、日本の再生可能エネルギーのポテンシャルは100万キロワットの原発2,116基分にも相当することが分かっている。この豊かな資源と日本の優れた技術で再生可能エネルギー立国を目指すべきなのである。