時代を見る目 255 希望ある明日に向かって [3] 未来を創る国際協力

片山信彦
ワールド・ビジョン・ジャパン 事務局長

ワールド・ビジョン・ジャパンが支援しているモンゴルの事業地を訪問し、ウランバートル郊外のゲルに住んでいる母子を訪ねました。そこに住む9歳の女の子は知的・身体的な障害を持っています。ゲルの中央のマットの上に寝ていて、時折寝返りを打ったり手を動かしたりしますが話すことはできず、唸るような声を出すだけです。さぞお母さんは落ち込み、疲れ、苦労しているのだろうと心が苦しくなりました。
しかし、意外にもお母さんは明るく笑いながら、「もちろん大変です。疲れます。でも、この子を育てるために多くの助けを頂き、育てる方法を教えてもらい、何より日本の方々の励ましが元気のもとです」と。これこそが国際協力の原点だ!と思いました。困難な中にあっても、前に進もうと思う人々に寄り添いながら支援を提供する。そのことで途上国の方々だけでなく、私たちも元気をもらうことができる。それが私たちにできる国際協力です。

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国際協力は、政府が行う政府開発援助(ODA)や国際機関が行う活動、私たち市民一人一人が直接支援に参加できるNGO(非政府機関)があります。NGOの支援の特徴は、非営利で直接人々に届く、市民が市民を助ける働きといっていいと思います。一人の力は小さくても一人一人が集まるときに大きな力になります。「何もかもはできなくても、何かはきっとできる」これはワールド・ビジョンの創設者、ボブ・ピアスのことばです。
直接市民が係わることで途上国の人々の生活の実際を知ることができ、その生活の変化も見ることができます。その結果、自身の視野が広がり日々の生活も変わるきっかけになります。本当の豊かさとは何かを味わうこともできるでしょう。
これからの日本は世界の中で歩まなければなりません。そのために国際化の必要があらゆるところで叫ばれています。国際化とは外国語を話せるとか、海外に行ったことがある、ということではなく、海外の人々の生活や文化を理解し、相互に助け合っていく中で自分の生活や生き方を変えていく中で育つものではないでしょうか。まずは、私たち自身の内なる国際化が第一に必要なのだと思います。市民一人一人ができる国際協力に取り組むことが、開かれた希望に満ちた未来を築く一つの鍵になると信じています。

* 大きなテントのような家。上下水道はなし。
■ ワールド・ビジョンは、キリスト教精神に基づいて世界の子どもたちのために、開発援助、緊急人道支援、アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)を行う国際NGOです。