神様がくれた風景 1 ソリ滑り

ソリ滑り
やまはな のりゆき

 「『いのちのことば』の表紙を、山花先生らしい楽しい人物の水彩画で描いてもらえませんか?」明るい声は、若き女性編集者Nさん。「では1月号からよろしくお願いします」と、うれしいお仕事の依頼をいただきました。
漫画家としてデビューして早25年。漫画の依頼は今までたくさんいただいてきたけれど、こういうお仕事の依頼は今回が初めて。机に向かい、どんな絵を描かせていただこうかと、わくわく。しばらくの間思い巡らす。事の重大さに気づくまでにそんなに時間はかかりませんでした。「これは、大変な事を引き受けてしまった………」
「1月と言えばソリかな?」 北海道の小樽生まれの道産子頭はすぐにそんな風に考えてしまうのです。冬、小樽は海があるため積雪は豊富。港町なので坂が多く、ソリで滑るコースには事欠かない。ソリ遊びが大好きだった僕は、毎日飽きもせず家の前の坂を、陽が暮れ辺りが暗くなっても延々滑っていました。「ボクが滑ってくれるから雪が潰れて雪かきをしなくてすむわ。ありがとね」なんて坂の上に住むオバさんから思いもよらない感謝の言葉をいただくとうれしくなって、調子に乗ってさらにハッスル。兄と、幼馴染たちと、従兄弟と、親友と、そして今ではわが子どもたちと。風を切って雪の中を滑降する記憶はどれもすべて楽しく、皆笑顔。大はしゃぎ。僕の頭の中にある「子どもの頃の楽しい記憶・冬編」フォルダを検索すると、真っ先に「ソリ遊び」 に行き着いたのは、思い出がそこにいっぱいつまっているからなのでしょう。
子どもの頃の数々の幸福の記憶のスナップは、神様がくださった素敵で貴重な贈り物。そうだ、その思い出の一枚一枚をアルバムから切り取って、心を込めて絵にしてゆけばいいのだ。祈りつつ、私なりに誠心誠意描かせていただくつもりです。一年間、よろしくお願いいたします。