私の子育てこれでいいの!? 第5回 ママ、どうしてわからないの?

グレイ岸ひとみ

 わが子ならば、泣き方や声を聞けば、なぜ泣いているのか、生活のリズムでだいたい見当がつきます。でも「何で泣いているの」かわからないまま、泣きやまない赤ちゃんを夫と交代で必死にあやすこともありました。わかってあげられたら親としても安心なのに、言葉で伝えられたらどんなにか楽なのにと思っていましたが、会話ができるようになってからも、自分の子どもであっても理解してあげられないことがあります。そんなとき、親として限界を感じます。

 いっきに二人の妹が加わり、長女れいあの生活は一変しました。ショックや寂しさ、いろんなことを想像して、できるだけフォローをしました。産後二か月でれいあと一緒に親子スイミング教室に通ったり、意識して一緒の時間を作ったり。とはいっても新生児が二人、常にだれかがおっぱいに吸いついている状態でした。目立った赤ちゃん返りもなく、数か月が経ったころ、朝になると、れいあが妹たちの洋服を着始めるようになりました。一生懸命に小さな服を引っ張って着ようとしている娘を見て、最初はイライラしました。「やめなさい、伸びちゃうよ」と言っても聞こえない様子。れいあも必死でした。よだれかけをして完成。「どうして着るの? 早く脱ぎなさい」。抵抗するれいあを、どうしても理解することができませんでした。

 ようやくある日、「もしかしたら、れいあの精一杯の赤ちゃん返りなのかも」と気づきました。妹たちのようになりたい、ママの目を引きたい。れいあの一途さが伝わり、思わず彼女を抱きしめたことが、昨日のことのように思い出されます。その日から、家の中では赤ちゃんの服を着てもいいことになり、大満足のお姉ちゃんでした。なぜもっと早くわかってあげられなかったのかと、自分を責めました。

 自分の思いや気持ちを言葉で表現できない子どもたちとのコミュニケーションは、簡単ではありません。親として途方に暮れることがありますが、思いどおりに伝わらないときの子どものフラストレーションもすごく強烈だったりします。 特に眠かったり、疲れていたりするとき。

 子どもの性格がからみ、もっと難しくなることも。双子のひとり舞香の言動に、のんびり・おっとり派の私は、よく理解に苦しめられています。二歳で、小学生の男の子に向かっていくほど気の強い舞香です。喜怒哀楽の表現がはっきりしていて、わかりやすい性格をしています。その反面、「どうして?」と首をかしげることも。

 幼稚園からの帰り道、「今日は、はあちゃん(はづき)が、先生に怒られちゃったんだよ」と舞香が報告してきました。「そうかぁ、はあちゃんは何をして怒られたの」と聞いた次の瞬間、「何言ってんの、怒られたのは舞香でしょ」とお姉ちゃんの訂正が入り、気まずそうにする舞香……。

 先日、れいあのランドセルが届いたときもそうでした。みんなでみとれた後、おやつを食べていると、「大変だぁ」という叫び声が。じじ、ばばが走っていくと、ボールペンでランドセルに落書きをしている舞香の姿が! 「どうしてお姉ちゃんの大事なものに!」母として複雑です。


 冬休みに入って間もなく、元気のないれいあに気づきました。風邪をひいていたのですが、それだけではなさそうです。考え込んでいました。「友だちにこんなこと言われた……」「火事が怖い」「戦争はなぜ起こるの」「小学校に行きたくない」。あれやこれや問題の根本がわからないまま、私も気が沈みました。でも「なんだかよくわからないけど、れいあひとりで悩むしかないのかな」と思い、母は手を引きました。れいあのことをすべて理解してくれているのは神様だけ。その神様に信頼して、おまかせしました。

 答えが出ず、すっきりしない日が二週間くらい続きましたが、ある日、三十九度の熱が半日だけ出て、その後は、晴れやかに元気なれいあに戻っていました。 ひと皮向けた成長ぶりに、幼稚園の先生にも驚かれたほど。

 話は舞香に戻りますが、ひとつ彼女がこだわり続けていることがあります。それは、「トイレではウンチをしない」というかたくなな決断です。できるくせに、なぜか座らない。「何をしてもダメ(親の見解)」なのです。なぜ? どうしたら? いつから? 「ありのままの舞香を愛してね」というメッセージを彼女から感じ取っている今日このごろですが、先日も聞いてみました、「ねぇ、いつからトイレでウンチしようか」。答えはいつもと同じでした。「八歳!」幼稚園の先生のアドバイスは、「本人にまかせなさい。ここまできたら親は黙っていればいい」と。う~ん、それができない~。

 理解できないことや受け入れ難いこともありますが、とにかく向き合って、子どもの話に耳を傾けて、コミュニケーションを十分にとっていけたらいいですね。