聖書注解を活用しよう 『実用聖書注解』活用法


杉山恵庭
日本バプテスト・バイブル・フェローシップ
 東京聖書バプテスト教会伝道師

説教者の悩み

 私は詩篇を続けて説教する機会があったが、その準備の際に最も苦しむのは、その聖書箇所が全体として何を言いたいのかわからないときである。数十回、じっくり読んでも理解できない、そんなことが幾度もあった。聖書の言葉の一つ一つは決して難しいものではないし、たとえ難しくても、辞書やレキシコンを調べれば、ほとんどの場合すぐに解決する。

 私が苦しんだのは、一つ一つの言葉がどんな状況の中で、どのような思いで言われたのかということであり、また、一つの詩の中にあるいくつもの部分が、全体として何を伝えようとしているのかが理解できなかったことである。

悩みの解決に役立つ『実用聖書注解』

 そのような私に、幾度もヒントを与えて助けてくれたのが、『実用聖書注解』である。一つの詩篇ごとに概説と注解がある。概説の部分で、その詩篇がどのような状況で歌われたのか、またその詩篇の全体のテーマは何であるのかが短くコンパクトに書かれている。経験が乏しく、浅学な私にとって非常に参考になるし、仮に賛成できない内容であっても、それを手がかりにして、今まで思いつかなかったことに気づくことが多くあった。

 注解の部分は、聖書を読んでいくときに出会う難解なところ、外してはならない重要なところにのみ絞って解説が施されている。こちらもコンパクトで短く、すべてを読むのにそれほど時間がかからない。

私の使用法

 「注解書の奴隷になるな、聖書そのものから恵みを受け、説教せよ」という言葉はよく言われるが、これは自分自身も気をつけていることである。そして『実用聖書注解』は、これを実行するのに大きく貢献してくれる。なぜなら、注解書を読むのに時間をとられないからである。

 私は説教の準備をするとき、まずテキストとなっている箇所の朗読、熟読に時間を割く、そしてそのテキストが全体としてよく理解できないときに、『実用聖書注解』の概説を見て参考にし、その後でテキストの熟読に戻る。そうすると、これが見えてくるのである。それでも見えてこないときには、注解の部分をひととおり読んでみる。

 以上のような説教の準備で、注解書を読む時間の占める割合は、ほんのわずかである。他の時間は聖書そのものの熟読に割くことができる。解説が長い注解書は、詳しいという長所もあるだろうが、すべてを読むのに、多くの時間を費やさなければならないという短所もある。

悩みが解決されると

 「テキストとなっている詩篇が、全体として何を私たちに伝えようとしているのか」、これが理解できると、説教する際に、一つの詩篇の中にいくつかある各部分を、頭の中で整理しながら順序よく、しかもあせらず落ち着いて説教することができる。またこれを伝えようと思って、力強く語ることができるのである。さらに、「主に身を避ける」や「主をほめたたえよ」など、同じ言葉が各所で何度も歌われている詩篇の講解説教をするときに、それぞれの同じ言葉を違った角度から、新鮮に語ることができる。

 もしこれが理解できなければ、説教の内容がばらばらになってしまい、まとまりのない説教、ひどい場合には意味不明な説教になってしまうだろう。

 同じ言葉を、いつも同じように細かく語っているだけならば、説教者はもちろん、聞いている信徒たちも飽きてしまうだろう。

まとめ

 聖書が私たちに何を伝えようとしているのか。これをよく理解することは、詩篇に限らず、どの書を読むときにも最も大切なことではないだろうか。そしてこれは、聖書を説き明かす説教者にとってはもちろんのこと、日曜学校で聖書のおはなしを担当する教師、また聖書をより深く知ろうとするすべての信徒にとっても大切なことと思う。

 その箇所その箇所の全体像が短く紹介されており、注解もコンパクトにまとまっている『実用聖書注解』は、これをとらえ、理解するのに大いに役に立つ。

 また一冊ですべての聖書の書巻をカバーしているので、説明が細かくて長い注解書などとは違って、何冊も買う必要がない。

 『実用聖書注解』は、多くのクリスチャンに役立つと思う。