豊かなディボーション生活のために
―もっと知りたい聖書の世界 ◆歴史的・文学的に理解するために

福井誠
お茶の水聖書学院教務主任・教授

現在、私はお茶の水聖書学院で教鞭をとっており、今期は、聖書解釈の具体的な手法について三つの作業を通して学んでいます。お茶の水聖書学院は、〝信徒奉仕者を育成すること〟が中心ですから、ギリシャ語やヘブル語の語学に慣れ親しんでいない人でも、しっかりと聖書を読んでいく方法を取得できるように努めています。
第一の作業とは、テキストの位置づけを歴史的、文学的に理解すること。それに基づき、第二の作業として、最初の読者(当時のユダヤの人々)が、どんなメッセージを読み取ったかを理解します。そして第三に、そこから今の自分へのメッセージを汲み取っていくのです。
そういう意味で、今回出版されるエッセンシャル・バイブル・レファレンスシリーズの各書は、この歴史的・文学的な分脈理解のために、非常に役立つ基本的な資料を提供するものである、と思わされました。実際、聖書はイスラエルの歴史と文化の中で生み出されてきたものですし、各書それ自体が持っている分脈、文章の流れも大事です。
ですから『聖書の成り立ち』は、これまで私たちが手にしている聖書がどのようにして今の形になり、私たち自身の言語に訳されるようになったか、簡単な歴史を振り返らせてくれますし、『聖書資料集』『聖書の概要』は、そのようにして私たちの手に渡された聖書全体の概略と各書のポイントを理解するのに役立ちます。また、『聖書時代の暮らし』は、当時の文化的な背景を、『聖書の登場人物』は、そこでどのような人物が登場し、活躍したのかを簡潔に解説してくれます。『イエスの生涯』は、イエスの生い立ちを立体的にイメージできるように描いており、イエスの語られたメッセージとの関連も考えさせてくれて、理解が深まります。
こうした書物が大事なのは、やはり、聖書解釈の第一の基礎である、テキストの位置づけについての理解を十分得ることができるためです。
確かに聖書は、不思議にもそういう背景知識なしに、つまり第一、第二の作業を飛ばして、いきなり第三の作業に移って、自分の心情に合わせて読んでしまえるところもあります。しかしその結果は、時として、聖書が語っている以上の内容を読み取る、つまりはただ自分の願いや思いを読み込んでしまっているだけ、ということもあります。そういう読み方では、決して信仰は育ちません。
やはり聖書は、ユダヤ人の歴史と文化の中で生み出されたものですから、まずはその歴史的な分脈を押さえる、そして文学的な特徴や全体的な構成にも気をつけながら当時の読者に語られた意味を探る、そうして初めて、自分に対する固有のメッセージを神から受け取る手順を大事にしたいものです。
今回の出版は、そんな基礎を与えてくれるものですから、聖書を学び始めたばかりの人はもちろん、聖書を教える立場にある教会学校奉仕者や役員の方も、ぜひすぐ手の届くところに置いてくり返し、目を通し親しんでいただきたいものです。