CD Review ◆ CD評 信者の学び、未信者への伝道に有益

『三浦綾子「旧約聖書入門・新約聖書入門」  』
長谷川与志充
三浦綾子読書会顧問、東京JCF牧師

 三浦綾子作品の朗読CDとしては、代表作の『塩狩峠』『道ありき』『氷点』が中村啓子氏の朗読によりハーベストタイムから出ていますが、生誕九十周年記念として、今回、新たに大塚芳忠氏の朗読による『旧約聖書入門』『新約聖書入門』が発売されたことを大変うれしく思っています。それは、三浦綾子さんの最も願っていたことが、自分の著作が読まれることではなく、「聖書」が読まれることだったからです。新約聖書入門の初めには、三浦綾子さんがクリスチャンの幼なじみ、前川正さんから聖書を贈られたときのことが記されています。前川さんは、「ぼくと一緒に、毎日最初から、聖書を読んでみませんか」と綾子さんに語りかけましたが、このことばはまるで三浦綾子さんが私たちに語りかけていることばのようにも聞こえてきます。
三浦綾子さんは、タイトルに「入門」と付け、旧約聖書入門のまえがきには「平易な手引書」と記していますが、内容としては、信者がこれだけの事柄をしっかりと覚えられたら十分と言えるものです。旧約聖書入門は、信者向けの雑誌「信徒の友」に連載されたものですので、まずは信者の皆さんがこの朗読CDを聖書学校の授業のような気持ちで学ばれることを私は強くお勧めします。(学費だと考えるとCDの値段も安い!)
それから、この朗読CDは未信者への伝道のためにも有益です。新約聖書入門は、「宝石」という一般の雑誌に連載されたもので、三浦綾子さんはその連載にあたって「路傍伝道をはじめるような感慨を持った」と記しています。ですから、この朗読CDはまさに伝道用CDなのです。
前川正さんは三浦綾子さんに聖書を贈り伝道しましたが、私たちは救われてほしい人にこの朗読CDを贈り伝道することができます。前川さんのように、その方と朗読CDを〝一緒に”聴き、内容について〝一緒に”語り合えるなら、その方は主を信じる者へと変えられていくことでしょう。特典として付いている「風はいずこより」は珠玉のエッセイ朗読集です。「その信仰によって、今もなお語ってい」(ヘブル11・4)る綾子さんのことばは、実に感動的です。
※特典として、三浦綾子著『風はいずこより』の朗読CD(朗読:山本 圭)入り。聖書は口語訳、一部文語訳を使用。
1989年収録のため、不快語や差別語、一部ノイズなどが入っておりますことをご了承下さい。