CD Review ◆ CD評 名曲と名画でイエスの御跡を辿る

「名曲で描く聖書の世界」Vol.2 新約聖書編
西 由起子
声楽家/フェリス女学院大学専任講師

名曲と名画でイエスの御跡を辿る

 『巨匠が描いた聖書』(町田俊之編著 いのちのことば社発行)を元に知られざる名曲を聴く、という何とも魅力的な企画が三枚のCDシリーズとして始まっている。

今回拝聴したのは「旧約聖書編」(二月発売)に続く第二弾「新約聖書編・」。まず最初に聞こえて来た神秘的な音楽は「惑星」で知られるホルストの曲。かの有名なアンジェリコの「受胎告知」を見ながら聴いていると、あっという間に自分がその場面に立ち会っているような不思議な感覚に捉われる。

続いて、音楽界の巨匠であるバッハやモーツァルトを始め、フランス音楽の大家フォーレ、オペラ作曲家のプッチーニ、「カノン」のパッヘルベル、「天使のパン」のフランクなど音楽史に名を残す十二名の作曲家の作品によりイエス・キリストの地上での御跡(降誕~バプテスマのヨハネによる洗礼~地上で主がなさった奇跡~教えと例え話)を辿って行く。天上の美しさを持つこれらの作品は彼らの代表作とは言われずとも、だからこそかえって絵画の世界に純粋に私たちを誘ってくれるような気がしている。

弦楽器・木管楽器・ピアノによるインストゥルメンタルの響きは、絵画に描かれている蝋燭の光のようにどこまでも温かく心地良い。

さて、収録曲に古楽器のヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの共演が一曲だけ登場する。有名作曲家の次男でもある作曲者が誰なのか、絵画は聖書のどの物語を描いたものか、是非ご自身の目と耳で楽しんで頂きたい。

実はこのCDには二曲だけ讃美歌が収録されている。編曲者・土井康司さんご自身のオルガン演奏による「まきびとひつじを」は私のお気に入りである。“御前に出ることで神に心を変えて頂く”世界に導かれながら、この曲が示す絵画「羊飼いの礼拝」の羊飼いたちが、幼な子イエスと出会ってきっと心変えられたであろうことを想像するのである。

第三弾CD「新約聖書編・」では受難以降が採り上げられる。これも楽しみに、また心して待ちたい。