CD Review ◆ CD評 震災で痛んだ地をいやす、みことばの賛美

西 由起子
ソプラノ歌手

仙台のクリスチャンホームに生まれ、教会で讃美歌に親しみながら育った大宮香織さんのデビューアルバム。
高校・大学でクラシック音楽を勉強したという経歴から想像していたイメージとは違い、少女のように素直な歌声は神様への純粋な思いを感じさせる。透き通った声の中に芯の強さが伝わってくるのは、神学校においても学び培った大宮さんの信仰の強さ・確信によるものなのだろう。
自らが奏でるピアノ一本による弾き語りの八曲は、すべて自身の作曲によるもので、ジャケットにあしらわれたパステルカラーのキャンディのようにメロウなサウンドは、LYREの雰囲気にも似て優しく温かい。
七曲のタイトルにはそれぞれ聖書の出典が記されており、聖句にほぼ手を加えずメロディにした曲と、自身の視線に置き換えて祈りのことばとした曲が並ぶ。
「主よ、私をささげます」は“あなたがたのからだを、神に受け入れられる、聖い、生きた供え物としてささげなさい”(ローマ12・1)という聖句を、「私をささげます」と、自らを神にささげる祈りのことばで紡ぎ直している。自身のまっすぐな応答が織り込まれた時、みことばの力が今を生きる私たちの日常の言葉としてより身近に伝わって来る。
「雨ニモ負ケズ」は唯一、聖句ではなく宮沢賢治の詩によるものだ。なぜ賢治の詩をとり上げたのだろうと考えた時、同じ東北人であることと同時に、この詩にある生き方を大宮さんも目指しているのではないだろうかと思った。
そうか、このCDは彼女の信仰告白なのだ。
「神様のために、そしてその神様を知らない人たちのために、歌を通して、神様の愛と慰めを届けたい」と言う大宮さん。東日本大震災後は、避難所・仮設集会所を訪ね、歌い続けているそうだ。同じ東北人だからこそ分かち合える思いを込めて、一四九センチの小さな体で力いっぱい弾き歌う賛美は、聴く人々に神様の愛と慰めを届けているに違いない。このCDを通して、大宮さんが伝えたい神様の愛と慰めが日本中に届くように祈りたい。

<収録曲> 1.祈り(詩篇143:1-12) 2.しあわせのおきて(詩篇119:71) 3.主よ、私をささげます(ローマ12:1) 4.時?伝道者の書3章?5.私を強くしてくださる方(ピリピ4:11-13, Ⅱコリント12:10) 6.雨ニモマケズ(宮沢賢治) 7.主は永遠の神(イザヤ40:21.26.28) 8.主をほめ歌え(イザヤ12:2-6)