DVD Review ◆ DVD評 平和を実現する「種」となれ

『DVD 激動の20世紀を生きた三人のクリスチャン』
友納靖史
常盤台バプテスト教会 主任牧師

戦後七十年の節目を迎える今年。来るべき時代に日本人キリスト者として、神の子と呼ばれるに相応しく「平和を実現する」歩みを模索している方すべてに、ぜひ出会って頂きたい激動の時代の証し人がここに収録されている。
「なすべき正しいことを知っていながら行わないなら、それはその人の罪です」(ヤコブ4・17)。これは、私が献身へと導かれる数か月前にポーランドにあるアウシュビッツ収容所を訪ねた直後、深く胸に迫ってきたみことばである。
「人間はどうしてこんなにも残酷で非情な行為が出来るのか……。」「もし同じ状況下に私が生きていたなら、一体何が出来たのか……。」自分もイエスを十字架に架けた群衆の一人であったとの深い反省と痛みを経験した終戦後のドイツや日本の諸教会。時代の預言者としての務めを果たし得なかった後悔とともに、それでも時代の波に押し流されず、最後まで神に従う生き方を選び取る勇気を持つ恵みに預かった少数のキリスト者の存在は希望の光ともなった。
日本のシンドラーと呼ばれ、六千名と言われるユダヤ人の命を救った杉原千畝氏の生涯は、アウシュビッツ後の絶望の闇に輝く光となっている。私もこれまで出版された関連書籍を読み、自称千畝研究家のつもりでいた。しかしここに取材された、若き日にキリストへの忠誠を誓った文書の発見、晩年家族へ示した信仰の証し等、巷で放映される映画・ドラマでは決して描かれないであろう真実の姿が証しされ、正に目からウロコのDVDであった。
第一次大戦後の中国で、虐げられた子どもたちの為に学校創設を成し遂げ、蒔いた種が今なおしっかりと根を張り、実を結び続けている清水安三氏の生涯。韓国人孤児三千人を生かすために奔走し、木浦のオモニ(母)と愛され、真の故郷である天へ凱旋した田内千鶴子氏の生涯。平和でない時代にさえも、彼らの心に満たされたキリストにある平和(平安)より生じた義の実。神に従うことを選び取る勇気を育むこの『種』がこのDVDを見る方々の内に蒔かれることを信じたい。「義の実を結ばせる種は、平和をつくる人によって平和のうちに蒔かれます。」(ヤコブ3・18)