特集 スポーツは信仰の妨げか?  スポーツは悪!?

リオ・オリンピックに沸いた二〇一六年。東京での開催に向けて政府も民間もともに力を入れ、スポーツ振興の盛り上がりを見せている。教会が避けてきたともいえる「スポーツ」の課題に、長らく取り組んできた方々に話を聞いた。


スポーツミニストリー
人口70%への新しい挑戦
日本国際スポーツパートナー
シップ(JiSP) 編
定価1,900円+税
日本福音キリスト教会連合 本郷台キリスト教会 牧師 池田恵賜
「運動系の部活に入ると日曜日に教会に来られなくなり、やがて信仰から離れる」「試合になると汚い言葉を使ったり、けんかになったりする」「競争をあおるより失敗してもなお愛されているということを伝えるべきだ」 ―これは私がスポーツミニストリーにかかわるなかで、実際にクリスチャンから聞いた声です。スポーツミニストリーに対してはいろいろな意見があるでしょう。しかし、短所を見つけるだけでは何も前進しません。スポーツは音楽や芸術と同様に、神様が私たちに与えてくださった世界共通言語です。音楽も芸術もスポーツも、用いる人や状況によって神の栄光となるし、その逆になることもあります。

私は「スポーツ」は福音を伝えるツールとなり得ると信じます。スポーツには人を引きつける魅力や感動させる力があります。国同士が絆を深めるためにスポーツを行う「スポーツ外交」という言葉もあります。若者のみならず高齢者でもスポーツ愛好家はいますし、団体競技では、規律や協調、ときには自己犠牲という精神も学べます。個人競技でも、自制心が強められたり、神様が与えてくださった体と精神を鍛えて、どこまで記録を伸ばせるかという醍醐味も味わえます。神様は「スポーツ」の中にたくさんの真理を隠しているように思います。
私がJiSP(日本国際スポーツパートナーシップ)の立ち上げにかかわったのは、部活で教会から離れていく子どもたちをどうにかしたいという思いからでした。JiSPは、スポーツミニストリーという枠組みでつながる超教派のネットワークです。牧師、宣教師、信徒、またスポーツ関係で生計を立てている人からスポーツを用いて伝道したいという人まで幅広く集まっています。

JiSPの働きには三つの柱があります。

(1)教会間のネットワークの構築
スポーツミニストリーは日本ではまだ始まったばかりです。分からないこともたくさんあります。ですから今は試行錯誤の段階であり、情報収集をし、ノウハウを蓄積させるときなのです。そのためにはたくさんの方々や教会と協力して情報共有をしていかなければなりません。ともに皆さんで「スポーツ」が福音を伝えるツールとなるように磨いていきたいと思います。

(2)教会と地域の橋渡し
本郷台キリスト教会では、昨年、第二回日韓親善卓球大会「ピンポン祭り」を開催しました。
教会内の卓球ミニストリーが、あるとき韓国人クリスチャンの卓球用品会社社長と出会ったことがきっかけで、あっという間に話が大きくなり、韓国からクリスチャンのコーチやオリンピックメダリストたちも駆けつけるイベントとなりました。日本側も地域の卓球協会の協力を仰ぎ、区役所の後援を頂き、近隣の中学、高校の卓球部にも呼びかけて三百名以上集まる規模になりました。区の後援があるので大会では信仰を証しするような時間は持ちませんが、クリスチャンの仕える姿勢が証しになっています。今回、大会後は希望者約百名がレストランに場所を移し、選手たちの証しやゲームで大いに盛り上がりました。地域の方々に大変喜ばれ、次回もぜひ参加したいと言われました。
このように「スポーツ」を通してクリスチャンのつながりを地域に広げることで、教会が地域とつながりを持つことができます。JiSPは、海外との窓口として世界のスポーツ宣教団体とも連携しています。二〇一九年のラグビーワールドカップや二〇二〇年のオリンピックに合わせてさまざまな宣教の働きが考えられると思います。

(3)クリスチャンアスリートの育成
世界には一流のプロアスリートとして活躍しているクリスチャン選手がいます。しかし、クリスチャンアスリートというのは偶然に生み出されるものではありません。その分野での土壌を耕し、種を蒔いていく必要があります。
大リーグ史上初めて三兄弟でメジャーリーガーとなったドリュー選手にどうやって信仰とスポーツを両立できたのか聞いたことがあります。彼は小さいころから両親や周りのクリスチャンの祈りと励ましがあり、遠征に行って教会に行けないときでも聖書通信講座があって信仰を保てたと言っていました。プロになってから信仰を持てるようにチャプレンの働きを整えることも必要ですが、プロになりたいという子どもたちにも目を留めていく必要があります。
子どもたちに信仰かスポーツか選択を迫るのではなく、信仰を持ちつつスポーツにも打ち込める、そんな状況をなんとかして作り出したいと願っています。若者たちが楽しみながら伝道できたら最高です。いや若者たちだけでなく、私たちも自然体で証しできるならば素晴らしいことです。

『スポーツミニストリー~人口70%への新しい挑戦~』(いのちのことば社刊)には、これまでのスポーツミニストリーのさまざまな経験とノウハウが詰まっています。ぜひ手に取ってお読みください。
そしてこの輪の中にあなたも一緒に入って、「スポーツ」という新しい枠組みで働かれている神様をともに体験しませんか。