時代を見る眼271 トランプ現象を読む[1] 国も福音派も分断した大統領選

クリスチャニティトゥデイ誌 編集顧問
ジャーナリスト
フィリップ・ヤンシー

タイム誌は「今年の人」欄にドナルド・トランプ氏を掲載し、「アメリカ(合衆国ならぬ)分断州国」大統領と見出しをつけた。大統領選挙の結果、西海岸と東海岸北部は民主党の青一色、その間は4州を除いて広大な共和党の赤色が広がった。
この分断は宗教にも及んでいる。多くの「無宗教」層の3分の2はクリントンを選んだ。対照的に白人福音派の81%はトランプを支持した。この数はブッシュ、マケイン、ロムニーを上回る。しかし、ほぼ同率のアフリカ系やヒスパニック系福音派は反対票を投じた。アメリカの忠誠の誓いの「万民のための自由と正義を備えた、神の下の分割すべからざる一国家」という言葉には、断層がいくつも生じている。
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とりわけ社会で福音派が汚点と見られることは嘆かわしい。私は40年間、福音派で著述をしてきた。福音派は私の血統であり、信仰の共同体である。その福音派という言葉が今、否定的な意味合いを持つ。そうした中でフラー神学校は、この言葉で恥ずべきこと、口汚くののしることに寄与してきたことについて公の悔い改めを表明した。
福音派の著名な伝道者たちの中には、熱心にトランプ氏を応援した人たちもおり、中には想定外の勝利を「神の直接的介入」と言う人もいる。ほかに、トランプ氏に難色を示す福音派指導者たちもいるが、多くの投票者と同様、鼻をつまみながらともあれトランプに入れた人もいる。
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カジノで儲け、女性やマイノリティーを傷つけ、妻以外の女性を口説いたことを自慢するような億万長者を、福音派が支持するパラドックスに、私自身も当惑していた。中絶のような福音派が重視する問題でトランプ氏に投票するのは理解できる。だが彼を英雄とし、クリスチャンの旗手にしてしまっていいのか? 何とも言いがたい。
このような私の見解は、ネット上でかつてない批判を受けた。裏切り者、左翼かぶれの共産主義者、同性愛者、救い主を否定する子殺しのイスラム教徒、とレッテルを貼る多くの反応が来た。私はトランプ氏が尊敬に値するかを問うただけだったのだが。
トランプ支持者たちは、ワシントンの堕落を一掃する威勢のいいアウトサイダーの登場に歓喜している。反対者たちは彼の政策を恐れ、世界のリーダーたちは総じて息をひそめている。イエスに従う私たちには、この国の癒やしを助ける修復の務めがある。