書評Books 苦闘する女性たちの背後にある 神の摂理を描く

『限りない愛に魅せられて』
遠藤芳子 著
四六判 1,200円+税
いのちのことば社

聖書神学舎 校長 鞭木由行

この書物は、前作『もういちど会える日まで』の続編で、やはり二部構成になっています。第一部では、著者が、牧師であり夫であった遠藤嘉信先生を天に送った後の約九年間の歩みが証しされ、第二部「その翼の下に ルツ記に表された神の愛」には、著者が奉仕する和泉福音教会で語ったルツ記の連続講解説教五篇が収められています。
遠藤嘉信先生は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病が発覚してからわずか一年余りで天に移されました。あれから間もなく十年が経過しようとしています。それは、多くの人々にとって今も忘れることのできない悲しみであれば、ご家族にとって、格別に伴侶として歩まれた著者にとって、どれほどの心の痛みを伴う経験であったことかと思わされます。
それだけで十分な試練のはずですが、ここにはその直後からのご家族三人の戦いの九年間が綴られています。それは、著者自身が筋肉の病を抱える身であるので、人としての忍耐と悲しみの限界を超えた戦いでした。この書物の中に証しされた、ご一家の、その後の九年間の歩みを知らされるとき、私たちは驚き、しかし(著者が願うように!)きっと主の恵み深さを賛美することになるでしょう。
第二部に収められたルツ記の講解説教は、著者の説教者としての確かな賜物を証しするものです。淡々とみことばを講解しつつ、ナオミやルツの背後に働かれる全能者の恵みのみわざを浮かび上がらせています。ナオミやルツの背後に著者自身の姿を感じ取るのは、私だけではないでしょう。夫を失ったナオミとルツとの経験に共感しながら、苦闘する女性たちの背後にある神の摂理を描き、ルツ記に込められたメッセージを取り次いでいます。
最後に、これらの試練は、母が父に頼るところから、神に頼るようになるために与えられた試練であった、神にすがって生きることにした母は徐々に変えられていきました、と述懐する息子さんの、神を知るゆえの発想のすばらしさに心打たれる。