書評Books 生活のすべての領域で福音を生きたい

基督兄弟団 ニューコミュニティ 牧師 小平牧生

『生き方の問題なんだ。』
大嶋重徳、桑島みくに、佐藤 勇、吉村直人 共著
B6判 1,200 円+税
いのちのことば社

一読して、とても意欲的な取り組みであると思った。何よりも、自分の思いを言葉に表してくれた桑島みくにさん、佐藤勇さん、吉村直人さんに感謝したい。本書は、この三人の若者のそれぞれの証言を挟んで、キリスト者学生会総主事である大嶋重徳さんによる、神の国に向かって生きる私たちの使命、そして日本の教会の歩みを振り返りつつ私たちが直面している課題についてのメッセージによって構成されている。
クリスチャンとして社会の問題に「かかわる」ということは、実際のところなかなかたいへんなことだ。「信仰は個人の内面の問題」と割り切る人が多い中で、ひとたび「自分はクリスチャンとしてこう思う」と(その考え方にかかわらず)告白した途端に、どこからとなく風あたりは強くなり、レッテルを貼られ、人間関係に難しさを感じることがある。だから私たちは年齢を重ねて賢くなって、「かかわる」ことから遠ざかる。牧師は野球と政治の話をしなくなり、教会の壮年たちは新聞や週刊誌と同じような話をしても、肝心のクリスチャンとしてどう生きるかを語らない。
そのような中で「かかわる」ことへと彼らを押し出すのは、「安全圏クリスチャン」ではありたくない、生活のすべての領域で福音を生きたいという、当然の思いだ。「イエス・キリストを主とすること」と「この世でクリスチャンとして生きること」に悩みながら、現実のかかわりの中で葛藤しつつ、必ずしも答えを見いだせなくても、それでも自分の言葉で表現しようとする。その勇気と誠実さに感動する。このような若者たちを誇りに思うし、教会の将来に希望を覚えるのだ。私たちも若者たちとともに、学問、家庭、職業そして社会や政治について、ともに聖書を学び、歩んできた歴史をありのまま伝え、語り合いたい。私たちがその務めを放棄するなら、「この世」が代わってそれをすることになるだろう。「かかわる」ことへの勇気を与えてくれる一冊として、心から推薦したい。