特集 歴史を知る ― 信仰深化への手がかり 二十一世紀に至る歴史の流れがパノラマのように見渡せる良書

『広げて見る聖書・キリスト教歴史年表』
青木義紀 訳
216㎜×279㎜
2,800 円+税

日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団 橿原キリスト教会 牧師/中央聖書神学校 教師 小泉 智

キリスト教は歴史的宗教です。二千年の歴史を持つ宗教という意味もあります。しかし、それ以上にナザレのイエスという歴史上の人物の存在抜きに、聖書もキリスト教の歴史も成り立たないという意味において、根源的な自己規定なのです。したがって、聖書と聖霊の働きさえあれば、二十一世紀の現代のこの瞬間に教会が誕生したかのように誤解する無歴史主義は戒められないといけないでしょう。
神学校で教会史を学ぶ重要性もそこにあります。一方で、歴史の学びは専門が細分化していて、素人には難解という声もあります。もっと広く一般信徒にも分かりやすい教会史の見取り図はないかとのニーズもあることと思います。本書は旧約時代の歴史から始まって、二十一世紀に至る歴史の流れが、パノラマのように見渡せる良書です。
初心者のためのさまざまな工夫も施されています。第一に聖書時代と聖書時代以降が途切れることなく一目で見渡せる点です。聖書学と教会史は分野が違うので、学びはとかく縦割りになりがちです。しかし、本書では歴史の一貫性を意識している点が嬉しいです。
第二にビジュアル世代にも対応できるように多くの写真がカラーで挿入されていて、資料としても参考になることでしょう。
第三にさまざまな学説にも対応している点が印象的です。特に古代の場合は年代特定に種々の視点があります。本書はこの立場が正しいと決めつけることなく、複数説がある場合は両論併記の配慮を怠っていません。
最後に特定の教派的立場に偏ることなく、あらゆる教派の歩みをできるだけ網羅しようとした努力のあとがうかがえます。キリスト教の歴史性・公同性が明確に意識されているので、多くの教派で活用できるものと思われます。
本書は“Rose Book Bible & Christian History Time Lines”の日本語訳です。良書を訳してくださった青木義紀先生の労に心から感謝したいと思います。神学生だけでなく、キリスト教の歴史に興味のあるすべてのクリスチャンにお薦めしたい歴史年表です。