目に見えるものを超える交わり

日本キリスト教団 富士見丘教会 主任牧師 田所慈郎

『あたたかい生命と温かいいのち』
福井 生 著
B6判 1,000円+税
いのちのことば社

読み終えて「また止揚学園に行きたいな!」と思わされました。ほかではなかなか味わうことができない、独特の、私たちが毎日の生活の中でどこかに忘れてしまっているような、“あの”空間、交わりの温かさ、優しさ、純粋さを思い起こされ、心が温かくなりました。
止揚学園とは、滋賀県東近江市にある知能に重い障がいをもつ人たちの支援施設です。止揚学園のホームページを見てみると「止揚学園は知能に重い障がいをもつ人たちの“明るい笑顔が溢れている”障がい者支援施設」と書かれてあります。その看板に偽りなく、止揚学園の仲間たちだけでなく、職員の人たちにも“明るい笑顔が溢れて”います。また不思議なもので私のようなよそ者がお邪魔しても、止揚学園の交わりに加えられた途端、“明るい笑顔が溢れる”者に変えられてしまいます。なぜすぐにそのようになってしまうのだろうかと毎回、止揚学園からの帰り道で思わされます。またそう思うのは、私自身がそのようなものを求めているということの裏返しでもあると思います。
なぜそのように“明るい笑顔が溢れる”者に変えられてしまうのか、その理由を『あたたかい生命と温かいいのち』に垣間見ることができると思います。
止揚学園の仲間たちはうまく言葉を言えなかったり、表現できなかったり、一見意思疎通ができないと思える人たちがいます。「そのような重度障がい者は生きている意味がない」と尊い命が奪われる悲しい事件もありました。しかし、ここに表面的でない、本質的な神の作品である私たち一人一人の人格と人格の交わりがあるのです。この豊かさを客観的にではなく、止揚学園という交わりの中で、仲間たちと一緒に年を重ねながら生きてきた福井生先生の言葉として本書は書かれています。まさに止揚学園という主にある交わりの生き証人の言葉です。本書は、私たちが心底求めている、神の作品同士の血の通った温かい心と心の交わりとはどんなものであるかを再確認させてくれます。