47年ぶりの大改訂
福音主義に立つ旧新約聖書学者と日本語学者の共同作業により、改訂が施された、これからの時代のスタンダードとなる日本語聖書が遂に完成
翻訳改訂の二つの特徴
「初めての」本格的な邦訳聖書の「改訂」作業
今回の翻訳改訂の特徴は、第一に、我が国における、「初めての」本格的な邦訳聖書の「改訂」作業であるということです。かつては『大正訳』が『明治元訳』の「改訂」として翻訳されましたが、新約聖書のみの刊行でした。今回は、『新改訳』第一版からの翻訳理念を踏襲しつつ、初めての「全面改訂」が行われています。現時点では、旧新約聖書約3万節の90%の部分に、用字用語を含む、何らかの改訂が施されています。向こう30年を視野に入れながら、思い切って改訳したところも多々あります。
旧約聖書から新約聖書への連続性を、従来以上に注意して訳出
第二の特徴は、同じ福音主義の立場に立つ、旧約学者・新約学者と日本語の専門家の連携が日常的に行われ、旧約聖書から新約聖書への連続性を、従来以上に注意して訳出することができていることです。第一版の時は、新約聖書が先に刊行されたこともあり、聖書全体を視野に入れた編集作業が徹底されていなかったところがあります。今回は、「改訂」であるゆえに、当初から、日本語表現の検討、旧約と新約の関係、特に「新約聖書における旧約聖書の引用」の問題等が入念に検討されています。原典に忠実であり、しかも、より簡潔な日本語訳を心掛けたことで、『新改訳』を使ってこなかった方々も、このたびの改訂によって新鮮な魅力を感じられることと思います。
『新改訳2017』の特徴
① 日本語の変化に対応
─ 日本語の変化にあわせて、よりわかりやすい訳語、訳文に変更しました。
② 聖書学の進歩を反映
─ 長年の研究を踏まえ、最新の底本に基づいて訳文を変更しました。
③ 原典に忠実
─ 新改訳の特徴である “原文が透けて見える” 翻訳を継承しています。
④ 朗読に適した読みやすい日本語
─ 過度に丁寧な箇所を改め、日本語として、より自然な文章にしました。
聖書翻訳6つの理念
『聖書 新改訳2017』は、以下の理念に基づいて翻訳・出版されます。
1 聖書信仰
聖書を誤りなき神のことばと告白する、聖書信仰の立場に立つ。
2 委員会訳
特定の神学的立場を反映する訳出を避け、言語的な妥当性を尊重する委員会訳である。
3 原典に忠実
ヘブル語及びギリシア語本文への安易な修正を避け、原典に忠実な翻訳をする。
4 文学類型
行き過ぎた意訳や敷衍訳ではなく、それぞれの文学類型(歴史、法律、預言、詩歌、ことわざ、書簡等)にふさわしいものとする。
5 時代に適応
その時代の日本語にふさわしい訳出を目指す。
6 今後も改訂
聖書研究の進展や日本語の変化に伴う必要な改訂を行う。
改定内容の一例
(1)日本語の変化に伴う訳の変更
「かわや」と聞いて若い方々は「何のお店?」と思うかもしれません。そこで、「かわやに出されてしまう」は「排泄されます」と訳します。
(2)まぎらわしい表現をより明確に
文章の途中で、「~のために」とあると、理由なのか、目的なのか、案外わかりにくいものです。そこで、目的の場合はできるだけ「~するように」といった表現を使って区分します。
(3)ひらがなを漢字に
ひらがなが、「多いから子どもでも読める」と言われる一方で、「多いから読みにくい、理解しにくい」という意見もよく聞かれました。『新改訳2017』では漢字が増えます。「いっしょ」は「一緒」、「りっぱ」は「立派」、「いやし」は「癒やし」など。
(4)旧新約で訳語をなるべく統一
これまで旧約では「子羊」、新約では「小羊」でしたが、区別しなければならない理由はありません。意味しているのは「小さな羊」であるより「子どもの羊」ですから、「子羊」で統一します。
(5)簡潔で読みやすい訳文
原文の意図を損なわない限り、簡潔で読みやすい訳語を採用するよう努めています。例えば、不要な代名詞の繰り返しを避けるだけでも読みやすくなります。「なぜなら・それは~からです」は「~からです」とするだけで、意味は通じます。
(6)内容にふさわしい表現
内容にふさわしい表現に変更しました。例えば、「おまえたちは白く塗った墓のようなものです」は叱責ですから、「……ものだ」で結びました。
(7)人名、地名の変更
固有名詞もすべて再検討し、地名や人名で、広く使われているものは、できるだけそれにあわせることにしました。「マリヤ」は「マリア」となります。ローマ皇帝「アウグスト」は「アウグストゥス」、「カイザル」は「カエサル」です。地名では、「アジヤ」は「アジア」、「アレキサンドリヤ」は「アレクサンドリア」としました。