『リーダーシップのダークサイド』著者インタビュー
「霊的な訓練とともに、行動を」
信仰者でありながら、さまざまな過ちを犯してしまう
牧師や伝道者、政治家や企業家たち―。
「リーダー」ゆえの〝心の闇”に深く切り込んだ
著者ゲーリー・マッキントッシュ氏に、その思いを聞く。
◆本書を書く上で、最も大変だった点、気を付けた点は何ですか?
闇の部分に振り回されたクリスチャンのリーダーについてどう書くか……特に大きな失敗を犯してしまった優れたリーダーの話を書くのは大変でした。皆、自らの闇の部分に牧会の働きをダメにされるのではなく、それを克服してほしかったと思っています。
◆過ちを犯したリーダーたちを「非公式に調べた」とありますが、リーダーたちはその取材に、どのように応じてくれましたか?
私たちが本書で取り上げたクリスチャンリーダーの多くは、伝記がすでに出版されており、雑誌や新聞の記事もたくさんある人々でした。それらの資料でそれぞれの背景を調べ、同時にインタビューにも多少応じてもらいました。インタビューでは、自らの過ちについてとても正直に答えてくれました。
◆アメリカではどのような反響がありましたか。
アメリカでは、良く受け止められています。現在、このようなテーマについて書かれた本は二冊だけなので、神学校や聖書学校などで広く用いられているようです。特にリーダーシップ・コースの課程でよく用いられています。
◆過去に過ちを犯した人が、悔い改めた後、リーダーとして復帰することはどう思いますか?
私たちは、神ご自身が、失敗を犯したクリスチャンリーダーの職歴を回復してくださると考えています。特に謙遜をもって、ほかのリーダーに自分の回復をスーパーバイザーとして見守ってもらっている人は、概して復帰を果たしていると思います。ただ残念なことに、闇の部分の犠牲者になったクリスチャンリーダーで、完全に牧会の働きに復帰した人はほとんど見かけません。
◆公に知られていない過去の過ちについては、公にするべきだと思いますか?
ヨハネの手紙第一1章9節には、「もし、私たちが自分の罪を言い表すなら、神は真実で正しい方ですから、その罪を赦し、すべての悪から私たちをきよめてくださいます」とあります。ここでは、すべてのクリスチャンに自分の罪を告白することを勧めています。しかしながら、闇の部分にとらわれることがいつも罪とは限りません。それは過去の経験から生じた弱さに過ぎないからです。ですから、自分の闇の部分をすべて公に告白しなければならないのではなく、むしろ知恵をもって、自分の闇の部分を理解し、向き合うように努めるべきでしょう。
◆機能不全に陥りつつあるリーダーや牧師に、信徒(周りの人)はどんな手助けができますか?
まず第一に、リーダーのために熱心に祈ってほしいです。
第二にそのリーダーの親しい人が、個人的にユーモアをもって、また愛をもって真実を語ってほしい。
第三に、場合によっては教会がそのリーダーを助けるために、カウンセリングや教育の機会を受けられるようにサポートしてほしいです。
これらは、問題解決のためのスタートに過ぎませんが。
◆日本の牧師や教会のリーダーたちも、過ちについて学ぶ機会はあまりないと思います。孤独や、燃えつきを覚えているリーダーたちへメッセージをお願いします。
まず第一に、牧師は、神が自分のことを覚えておられることを忘れないでください。第二に、神の愛と恵みは、どんな状況の中でも十分であることを覚えてください。第三に、リーダーは神が祝福してくださることを信じて、定期的な祈りを継続してください。
しかし、これらのことと同時に、リーダーは自分の状況を改善するために何か行動を起こすべきです。
ネヘミヤが試みにあったとき、霊的に整えるのと同時に、実際的な行動もとったことを思い出してください。ネヘミヤ記4章9節に「私たちは、私たちの神に祈り、彼らに備えて日夜見張りを置いた」とあります。ネヘミヤは祈っただけでなく、警備する人を立て、とても実際的に問題に対処したのです。
このように、牧師もすでに述べた霊的な訓練をするとともに、このテーマについてできる限り学ぶべきです。牧師仲間で、このようなことについて話し合うことのできるグループを築くことも助けになるでしょう。
『リーダーシップのダークサイド』ゲーリー・L・マッキントッシュ サミュエル・D・ライマ 共著
松本徳子 訳 A5判 1,980円