『教会福音讃美歌』ができるまで 第4回 歌詞の見直し
中山信児
「福音讃美歌協会 副理事長
日本福音キリスト教会連合 菅生キリスト教会牧師
『教会福音讃美歌』の収録曲において、歌詞、訳詞に込めた思いを聞いた―。
Q 「歌詞の見直し」については、翻訳しなおした曲としなかった曲があるようですが。
『讃美歌』(一九五四年)や『聖歌』(一九五八年)には大変素晴らしい歌詞が数多く収録されています。しかしそれらの出版から半世紀以上が経ち、その間に日本語は大きく変わりました。例えば、四十歳より上の世代には理解でき、美しく懐かしく感じることばが、十代、二十代の人には古くて分からないということがあります。今回の編集作業では、古くても分かりやすく美しいことばはできる限り残すようにしましたが、よく歌われているものでも〝そのまま次の世代に手渡すのは難しい”と判断したものは改訳することにしました。
Q 分かりやすさはもちろんですが、讃美歌としての深みも求められる……。訳詞は大変だったと思います。
讃美歌は礼拝に集うすべての人のものです。そこに求められるのは、文学的、音楽的な高みではなく、だれもが歌えて理解できる平易さであり、また、歌う者の心に届く深みです。しかし、深みのある平易さは簡単に生み出せるものではありません。日頃の信仰の姿勢、ことばを大切にする姿勢が求められるところです。
実際の翻訳は、讃美歌委員会の歌詞チームのほかに、約二十名の翻訳者に依頼しました。翻訳者とやり取りしながら訳詞を練り上げ、最終的に編集者がすべての訳詞に目を通し、必要に応じて手を入れる形を取りました。謙遜に奉仕してくださった翻訳者の皆様に感謝いたします。
Q 降誕、十字架、聖霊……など各項目がありますが、新たに設けたテーマなどはありますか。
もくじの項目を決めるにあたって配慮したのは、福音の豊かさを表すことと、讃美歌を探すツールとしての使いやすさです。『讃美歌』『聖歌』のほかにも内外の讃美歌集を参照しましたが、今回、新たに設けた項目はありません。ただ、あえて設けなかった項目があります。それは「葬儀」の項目です。理由は、葬儀で用いられてきた讃美歌の多くが、よみがえりや永遠のいのちを歌う讃美歌であって、それらを「葬儀」としてまとめてしまうと、通常の礼拝で用いられる機会が失われると考えたからです。もくじでは、「よみがえりと永遠のいのち(葬儀)」として扱っています。
◆次回のテーマは「メロディーへのこだわり」