かおるの雑記帳 食いだおれの街より
内山 薫
日本バプテスト宣教団 池田キリスト教会会員
私の住んでいる所から電車で30分行くと、大阪北の中心地です。JRや私鉄の大阪・梅田駅を中心に、デパートやホテル、オフィスビルがひしめくように建ち並んでいます。地下街も網の目のようにはり巡らされていますが、この迷路を迷わず目的地まで到達できるようになるには、ちょっとしたキャリア(!)が必要です。人の群れをくぐり抜けて歩くワザについては言うまでもありません。
この人・人・人の大阪の中でもとりわけ活気にあふれ、人の群れの絶えない場所といえば、デパートの食料品売り場でしょう。デパートの上階で、素敵な食器や小物、洋服やバッグを多少気取って眺めていても、ここに来れば誰もがナマの人間に戻ってしまう、そんな感じで、熱気もひときわむんむんしています。自分も含め、人間、やはり、食べることが好きなんだなぁと思わされます。
ひと昔前には見たことも聞いたこともなかったような世界各国の食べ物が、今や簡単に口にできる時代になりました。人々のグルメに対する関心にもひとかたならぬものがあります。昔なら王侯貴族しか口にできなかったような料理を、今では庶民が日常生活の中で、それもお城の中だけで使われていたような高級な器に盛って食べることができるのですから、私たちの食生活は昔の王侯貴族並みと言っても過言ではないかもしれません。しかし、そんな恵まれた生活にあって、もう何を食べても驚かない、感動できないという現実もあるような気がします。
先日何気なくラジオを聞いていたら、こんな話が流れてきました。「今の時代、人々はおいしいものを求めて血眼になっている。でもぼくは、おいしいものを食べるより、どんなに質素でも、それをおいしく食べたいですね。」なるほど、いい言葉だと思いました。「おいしいもの」を求める欲求には限りがありません。が、どんな条件のもとにあっても「おいしく食べて」満足することは可能です。食べ物に限らず、こういう姿勢で物事に臨むことが、目の前にあるものを感謝して受け取る態度につながるのだろうと思わされます。当たり前のことを感謝できる心……忘れないようにしたいなと思います。