こころに写るもの 10 チューニング
岩渕まこと
楽器を演奏する際に必要なのがチューニングです。最近ではチューナーという機材を使うのが一般的になり、これさえあればたとえ周りの楽器が音を出していても、自分の楽器をチューニングすることができます。私が普段使用しているギターは弦が6本なので、比較的短時間でチューニングができますが、12弦ギターになると耳でチューニングしていた時代には30分くらいは平気でかかったものです。今でも大変なのがピアノに代表される鍵盤楽器です。2時間くらいはかかるのが普通です。まあこれは演奏者にはできないので実際の作業はありませんが、調律された音の響きが自分のイメージに合っているかどうかが問題になります。音を合わせるのですから調律する人が違ったって同じだと思われるかもしれませんが、ちょっとしたセンスや技術で明るい響きがする調律もあれば、窮屈な響きの調律もあるのです。結局ただ周波数的にぴったりと合っていれば良い、というものではないのです。人にも四角四面といわれるタイプがありますが、この表現はまじめはまじめでも「過ぎる」がつく程ということでしょう。私は時々思い起こす聖書の言葉があります。それは伝道者の書にある「あなたは正しすぎてはならない」という箇所です。私も気がつくと自分の考えを力説している時があります。周りから「ハイハイ、わかりました」という声が聞こえてくるようです。自分の調律こそ調律師にまかせないといけません。気がついたら「あの人とは話ができない」ということになりかねません。願わくは人生の奏でる音楽が良い響きでありたいものです。